第141話 二喬
話は少し遡る。
袁紹に敗けたあと、俺は様々な対応に追われていたのだが・・・
「陳宮顔色が悪いぞ、ちゃんと寝ているのか?」
職務の合間、顔を合わせるなり張遼が心配そうに聞いてくる。
「そうか?寝れるときは寝ているから大丈夫だ。」
俺は寝所で横になっても寝れない日々が続いており、どうせ寝れないのならと資料の整理から始まり、今後の戦略を練っていた。
その日の晩、一応寝所に入り、いつも通り、地図を広げ、戦略を練り始める。
袁紹に負けた今、どこで戦端が開かれてもおかしくない、俺は現状の兵力から仮想戦略を立てて検討していく。
「孫権の動きも気になるな、敗戦をどう見ているか。」
対袁紹を考えるにしても南で勢力を拡大している孫権が動けば兵力を割かなくてはならない、青州で袁紹、徐州で孫権と睨む状況では動くに動けなかった。
「陳宮様、まだ起きておいでなのですか?」
大喬がお茶を持ってやって来る。
「大喬さん、こんな夜分にどうしましたか?」
「陳宮様のお部屋に灯りがついておられましたので様子を伺いに参りました。」
「これはご心配をかけたようですね、見ての通り少々戦略を練っていた所です。
心配には及びませんので休んでください。」
「陳宮様、寝ないとお顔がよろしくないですよ、さあ横になってください。」
「いや、まだ寝れなくて・・・」
大喬に押されるように俺は寝床へと連れて行かれる。
「仕方ない、もう寝るから大丈夫です。」
寝床で横になりながら大喬に伝えるのだが・・・
「なりません、ちゃんと寝付くまで私が見張っております。」
「いや、見てられると寝れないというか・・・」
「それなら・・・」
大喬は優しい声で子守唄を歌い始める。
「いや、子供ではないのだから・・・」
そう言いながらも段々その優しい歌声を聞いていると瞼が重くなっていく。
「陳宮さま、おやすみください。」
俺は大喬の歌声を聞きながら眠りにつくのであった。
翌朝、目が覚めた俺は大喬にお礼を言いに行く。
「大喬さん、昨日はありがとう。
おかげでよく寝れたよ。」
「お力になれたのなら何よりでございます。
よろしければ、今晩もお伺い致しますよ?」
「それはいけない、女性が男の部屋に来るのは醜聞を考えてもいい話では無い。」
「あら、それなら妹の小喬も一緒に参ります。
それなら何かあるなどとは思われぬはずです。」
「二人いれば大丈夫なのか?
おっ、張遼いいところにいた、少し聞きたいのだが・・・」
俺は通りがかった張遼に聞いてみる。
「大丈夫だ、大喬小喬の二人がいいのなら、別段醜聞にはならないだろう。」
「私達は何も問題ありませんよ、それより陳宮さまの御身体の方が心配です。」
「俺もそう思う、陳宮二人の好意に甘えておけ。」
「そんなものなのか?」
男女の機微に疎い俺としては女性が夜分に男の部屋にいることが問題な気がするのだが、張遼が言うのなら問題が無いような気もする。
「大喬さん、面倒をかけてすまない、時間のある時で構わないからたまに来てくれるかい?」
俺は久しぶりに眠れた事により、頭がスッキリしている、やはり寝不足の頭よりは充分に戦略を考える事が出来る今の状態が好ましい。
出来ることならこの状態を維持したいと思う。
「ええ、喜んでまいりますわ。」
「暇な時で構わないからな。」
「はい、わかっております。」
そう言いながらも毎日のように寝所に来ては寝かしつけてくれるのだった・・・
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