第139話 孫香の推薦

話し合いが一応の終結を迎えて3人、いや曹彰も含めて4人が帰って来た。

「張遼話し合いは終わったのか?」

「ああ、終わったな。

陳宮、誰でもいいから子を作れ。」

「なんの話し合いをしてたんだよ!」

「跡継ぎの話だ、いい加減避けて通れない話だろ?」

「・・・それは。」

俺としては子を残すつもりは無くなっていた。


このまま天下を曹操に取らせた場合、狡兎死して走狗烹らるの言葉を体現することになるだろう。


漢の建国の英雄、韓信の末路を思い出す。

彼は天下統一後、一時は王に任じられたが、その名声と実力の為に警戒され、難癖をつけられ降格に次ぐ降格により、身分を剥奪され、最後は殺されたのだ。


チカラを持ち過ぎた者の末路は悲惨なものというのを感じさせられる話ではあるが、自分もそうなる可能性が高い。

天下を取るまでの時間と俺の歳を考えれば俺は降格させられたあたりで寿命が来るだろう〜問題無いかも知れないが、子供を作りでもしたらその子の末路が悲惨なものとなる。


俺にはそんな人生を与えてしまう子供を作る気は無かった。


「お前と言うやつは近くに美女がいながら中々手を出さないからな、まったく早く作れ。」

「その事はまあ置いておこう、孫香殿滞在なさるなら何なりと申し付けください。

我々は孫権殿との同盟を軽く見るつもりはありませぬ。」

「そうですか、それならば私が連れてきた者を家臣として迎えていただけませんか?」

「家臣にですか?ええ、それは構いませんが。」

「そうですか!私が見込んだ者達です、どうか陳宮様の手で活躍させてください。」

「孫香殿が見込んだ?孫権殿の家臣では無いのですか?」

「もちろん兄の息がかかっていない者を集めました、そうでないと陳宮様が信じてお使いに成られないでしょう?

紹介させてもらっても構いませんか?」

「是非お願いしたい。」

孫香の言葉が真実かどうかはゆくゆくはわかるとして、領地の広さの割に将が足りていない、猫の手を借りたいほど人手は欲しかった。


「陸遜、甘寧挨拶をしなさい。」

孫香の後ろに控えていた文官と武官が前に出てくる。

「陸遜にございます、孫香様の招集に応じ陳宮様にお仕え致すことになりました、微才ながら天下の為にお役に立ちたいと思います。」

「甘寧だ、江賊上がりだがそれでもいいなら仕えてやるぜ。」

文官は陸遜といい、武官は甘寧か。


「甘寧、江賊がなぜ士官を選んだ?」

「孫香から聞いたが、陳宮、あんたは敵地のど真ん中の城を落として暴れまくったんだろ?」

「まあ、言い方は引っかかるが、そんなものか。」

黎陽を落とした事を考える、たしかに敵地の中で暴れたとも言えなくない。


「江賊の俺でもそんな頭のおかしい真似はしない、そんなあんたなら面白いものが見えそうだからな。」

甘寧は大きく笑うが、そんなに俺のしたことは変だったのだろうか、俺の笑みも少し引き攣るのだが、それを見た張遼達から少し笑いが漏れている。


「私としても、どのような考えで決行したのかお聞きしたい。

かなり部の悪い賭けでは無かったのですか?」

陸遜も興味津々といった感じで聞いてくる。


「君達は少し勘違いをしているみたいだ、あれぐらいは事前準備と仲間の協力があれば出来る事だ、それには張郃が仕えてくれた事も大きかったな。」

俺の言葉を聞き、二人共信じられないような表情をしていた。

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