第125話 調略

曹彰が許昌に行っている間に孫権からの使者として周瑜が来ていた。

「周瑜殿がお越しとはこれはどのようなご要件でしょう?」

俺は敵対こそしていないものの、他国に来た周瑜の胆力に驚く、現在年若く、後を継いだばかりの孫権軍をまとめているのは周瑜なのである。


その多忙さを考えれば他国に来ている場合では無いだろう。

「それほど緊張なされるな、陳宮殿に悪い話では無い筈です。」

「俺に取ってですか?」

「いかにも、単刀直入に申す、陳宮殿、我ら孫権軍に来ないか?」


「あはは、勧誘でございますか。

残念ながらそちらに行くことはありませんな。

しかし、お誘いは嬉しいものです。

私を評価していただいたということですからな。」

俺は周瑜誘いを断る。


「陳宮殿、曹操は貴方を評価しておらぬのでしょう、何故忠義を尽くす必要がありますか?」


周瑜は曹清との関係悪化の噂を聞きつけていた、婚約者を奪われたいきの陳宮なら曹操に恨みを持っていてもおかしくない、青州、徐州が味方につけば孫権軍も曹操軍に引けを取ることは無い、ましてや陳宮達旧呂布軍は孫権軍が苦手とする騎馬隊が精強なのである、領地を差し置いても味方に加えるべき相手であった。


「今裏切ると女の事で裏切ったという悪評を遺してしまいます。

私は後世の評価が怖い。」

「陳宮殿、曹操の下にいたからとて後世から評価されるとは限りません。

我が主君である孫権様は陳宮殿を英傑と見なし、御妹、孫香様を陳宮殿の妻として末永く好を結びたいとの仰せになられております。」

「ご冗談を、孫権殿の妹とあればまだかなりお若いはず、私のような年老いた者に嫁ぐなど不幸でしかありません。」

「それがですな、官渡の戦いでの陳宮殿の戦ぶりに孫香様が興味を持たれましてな、是非とも嫁ぎたいと仰せなのです。」

周瑜はそう言うが本当な訳が無い、俺を取り込む為には妹を差し出すという政略結婚であることは明白であった。


「どちらにしても辞退致します。

ですが私としては孫権殿と事を構える気もありません。

どうか角の立たないようお伝え願いたい。」

「残念極まりない、ですがいつでも孫家にお越しください、我らは陳宮殿を迎える準備は出来ております。」

周瑜は丁重に挨拶をして帰っていく。


「陳宮、俺は有りだと思うが?」

張遼は俺に孫権への寝返りを薦めてくる。

たしかに噂を考えれば怒りに任せて孫権につくのも悪くないかも知れない、だが曹操は一代の英傑である。

孫権に味方したところで曹操が天下を取れば意味が無い。


今は感情を抑えて曹操につくべき時なのである。

「張遼、それは浅慮というものだ、曹操を裏切ると先が無い、孫権とて裏切って来たものをそれ程信じる事はないだろう、青州と徐州で袁紹、曹操との戦い使いつぶされるだけだ。」


俺は張遼を説得して曹操麾下の道を選ぶのであった。

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