第130話 曹清と・・・
「曹丕、夏侯充、いったい何のご用事ですか?」
曹清は人目に付きやすい池の辺りで話し合いをする。
密室で会った事で人に変に疑われたく無かった。
「姉上!何故謹慎なさっているのですか!私が何かいたしましたか!」
曹丕は泣きそうな顔を見ている。
その表情に少し罪悪感が生まれる。
「曹丕、今は貴方の事にかまっている場合じゃないの。私は私の大切な者の為に謹慎しているのだから、邪魔はしないで。」
「わかりませぬ!何で謹慎することが大切な者の為になるのですか!」
「曹丕わからないのならそれでもいいわ、私も人に言われるまでわからなかったから。でも、私はこうするしかないのよ。」
「姉上!!」
「お二人とも落ち着いてください、曹丕様、曹清様もお部屋に長くお籠りになられるから気が滅入っておられるのです。
どうでしょう、今日は天気もよろしい。
この空の下でお茶でも致しましょう。」
「それはいい、誰か茶を持ってこい!」
「曹丕、夏侯充、私は早く部屋に戻りたいのですが。」
「曹丕様が初めて外に出られたのです、どうか曹清様もお付き合いくださいませ。」
夏侯充が深く頭を下げる。
たしかに曹丕が外に出れたのは一歩前進である。
少しぐらいなら・・・
曹清は渋々ながらお茶に付き合う。
久々に人と会い、話すことは楽しくもある。
夏侯充が世間の事を話し、曹丕が興味を示す。
ただそれだけの事なのに懐かしさを感じ、今は楽しく感じる。
日が欠ける前にお開きとして、自室に戻るのだが、戻って直ぐに曹操に呼ばれる。
「お父様、何のご用事ですか?」
「・・・曹清、今日何をしていた?」
「何をとは?」
「庭で男と会っていたのか?」
曹清はビクリと震える、心がざわつき先程まで楽しかった思いが一気に不安を駆り立てる。
「・・・ええ、曹丕が夏侯充を連れて会いに来ておりまして、その対応をしておりました。」
曹操が頭を抑える。
「お父様どうなさいましたか?」
「何故今日なのだ!いや、何故謹慎を破っておる!」
「曹丕が無理に・・・お母様も留守でしたので私が対応しないと他の者に被害が出かねなかったのです。」
曹清は仕方なかったと説明する。
今回に限って言えば会わなければ翠嵐が斬られていたかも知れない、謹慎を破った事は悪いが、致し方無かったのだ。
「・・・陳宮が見ておったぞ。」
「・・・え。」
曹清の血の気が一気に引く、見られた、陳宮様に・・・
私はその時どんな顔をしていたのだろう。
私が男と話している姿を見て陳宮様はどう思われたのだろう。
恐怖が忍び寄ってくる。
「お、おとうさま、今なんと・・・」
間違いであって欲しい、この半年間謹慎していたのだ。
今日はどうしようもなく対応しただけなのだ。
「陳宮が言っていた、女の事で騙されるのは性に合わないと、俺が送った書状も逆効果になったかもしれん。」
「そんな・・・」
曹清は膝をつく。
「一応、最後のチャンスをもらいはした。
だが陳宮は既にフラレたつもりになっておる。
信頼を回復するのは並大抵ではないぞ。」
「わかっております。私が招いてしまった失態でございます・・・」
曹清は涙を流し身を震わせていた。
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