第127話 半年経過

曹彰が徐州に来てから俺達は軍事、内政と引き続き精を出していた。

悔しさを糧に職務を遂行するみんなのお陰で、

半年ほどたった頃には充分に鍛えられた兵士が出来上がっていた。


「陳宮、曹操から新年の宴の誘いが来ているぞ。」

新年を迎える前に曹操から使者がやって来た事を張遼が知らせに来た。今回は命令という形を取らず誘いという形を取った事はこちらに気を遣っているのだろう。


「一度、許昌に向かうか・・・」

俺は気は進まないものの、現状でいい筈もない。 一度曹操に会って話すべきだろう。

「陳宮正気か?許昌に行けばお前は始末されるのではないか?」

「その可能性が無いとは言えないが、たぶん大丈夫なはずだ。」

俺は張遼しかいない状況で正直に話す。

「そう言ってもだな・・・」

「たしかに俺は警戒される存在になっていると思うが、袁紹という敵が存在する以上、粛清は出来ないはずだ。

まあ、その為にも主だった者には徐州に残ってもらい様子を伺ってもらうが。」

「そこまでして行く価値があるか?」

「ある、このまま袁紹を滅ぼしたら次の狙いは俺になるだろう。」

「なっ!」

「今手が出されないのは2面作戦が出来ないからだ、それならば今のうちに会ってわだかまりを解けば安心出来るだろ?」

俺はそう言いながらも天下を取った後の俺の未来は明るく無いだろうと感じていた。

その際に張遼達に被害が出ないようには配慮しなければならない。

はぁ、長生きはしないようにしないとな・・・


「大丈夫なのか?」

「大丈夫だ、曹操やその軍師達は馬鹿じゃ無いからな、俺を害したら外様の家臣は裏切り、袁紹に味方をするだろう。

そうなれば曹操は終わりだ。」

俺としても単独で袁紹は滅ぼせない、曹操の陰にいるからこそ、今の平穏があるのだ。


俺は供に張郃を選びその手勢とともに許昌へ向かう。

「何があってもお守り致します。」

「いや、何かあれば直ぐに張遼に知らせに走れ。その時は後の事は張遼の判断に任せると伝えてくれ。」

「なりませぬぞ、その時は陳宮様もご一緒に!」

「俺は張郃の武勇なら許昌の守りすら突破出来ると信じているのだ、いいかその連絡にみんなの全てが掛かっている、俺の信頼に応えてくれないか?」

「陳宮さま・・・」 

俺は少し卑怯な話術で張郃を説得する。


「まあ、そんな事にはならないと思うが、万が一の時の事だ。」

俺は何かあった時の算段をつけて許昌に入っていくのだった。

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