第123話 曹操と曹彰

曹清が別室に向かったところで曹彰と話し合う。

「陳宮はどうだ?何か言っていたか?」

「先生は何も、既に受け入れておられるご様子でした。

しかし、家臣達は受け入れられないのでしょう。」

「当然といえば当然だな、婚約者を盗られるなど合ってはならない事が二度目だ。」 

一回目は妻の呂希である、この事自体合ってはいけないのだ、それなのに自身の娘まで陳宮を裏切る、いや裏切ったような噂が出るなどとは・・・ 

曹操は頭の痛い思いだった。


「私の見解としては先生に女をあてがうのは下策に思えます。」

曹彰は話にこそ出したものの、妹との婚約話は止めた方がいいと考えていた、年頃ならまだしも、まだ子供である、陳宮の心を掴めるとは思えない。

それに子供を押し付けたとあれば張遼達の不満は更に増すであろう。


「しかしだな、わかりやすい手ではある、いや、あったのだが・・・」

曹清が陳宮の側にいることで陳宮を親族と見なし、自由に動けていたところがあった。

しかし、こうなった以上、新たに女性をあてがうのは良くないように感じる。

「現状は逆効果です。」

曹彰はアッサリと否定する。


そして、更に曹操に情報を渡す。

「父上、陳宮達は呂布の子供と貂蝉を既に徐州まで連れて行っております。」

曹操は人質がいないという事実を突きつけられる。


曹清との婚約が決まった事により、呂布の子供への警戒心が緩んでいた。

陳宮は性格上、娶った相手を裏切るとは思えなかった、それならば貂蝉達を見張らない事が恩になるだろうとの認識もあったのだが。

「既に重しは無いのか。」

陳宮を縛る物が無くなっている事に曹操は気づく。


「父上、そこでですが、私が引き続き先生の下に参ります。」

「なに?お前が行ってどうする?」

「私が人質になるのです。

さすれば先生から裏切る事は無いと思います。」

曹操は思案する。

今誰が行っても断られかねない、だが今までいた曹彰ならどうだ・・・


「わかった、曹彰に任せる。

陳宮を裏切らさないようにしてくれ。」

「つきましては父上、正式に曹清との婚約破棄を行ってください。」

「なっ!それだと曹清の噂が事実と認めた事になるではないか!」

「今更です。

私としては汚れた物が婚約者など許せそうに無い。

それに張遼は他の女性をあてがい、先生の妻にしようと動いておりました。」

「ぬぅ、曹清以外にか・・・」

曹操は渋い顔をする、曹清との距離が開く今、別の女性と関係を持てば寵愛が移る事になるのではないか。


「当然では?主に子を設けてもらいたいのは家臣の希望でしょう。」

「わかった、陳宮の妻については俺が何か言うことは無い。

だが、婚約破棄は出来ん、帝がお気になされていることもあるのだ。」

「ちっ、それがあったか・・・

ならば、帝の命に背いたと二人を処罰なさればいい。」

曹彰は舌打ちする。

その姿に曹清を姉と慕っていた姿は欠片も残されていなかった。


「曹彰、早まるな。

姉をそこまで追い詰めるな。」

「姉?止めてもらいたい、あのような痴れ者と血が繋がってるなど考えたくもない。」

曹彰の曹清への敵意は高まり切ってる。


「・・・曹彰、決定に変わりはない。

陳宮に下に行き、謝罪と・・・いや俺の書状を持って行け。

そして、妻は誰を娶ろうと関与しない事を伝えてくれ。」

曹操は曹彰から曹清のフォローは引き出せない事はわかっていた。

だからこそ、事情を書いた書状を陳宮に渡すのだ。


「わかりました。父上が一刻も早くゴミを処分する決断をしてくれることを願っております。」

曹彰は最後まで曹清への敵意を隠す事は無かった。

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