第121話 諸将の前で
諸将が集まる中、曹彰は陳宮の使者として曹操の前に立っていた。
「曹彰、まずは聞こう、何故陳宮の使者として来ている?」
「現在陳宮が管理する徐州、青州は袁紹、孫権と強敵に囲まれています。
先の敗戦もあり、不測の事態に備える為には陳宮の存在が欠かせません。」
曹彰は陳宮が来ない表向きの理由を語る、たしかに青州は袁紹に攻められたばかりであり、南の孫権とて油断ならない相手ではある、だが諸将の引き締めをはかる場に来ないという事は謀反の疑いをかけられても仕方ないと言える。
「曹彰、そうではない、何故お前が使者なのだ?」
「それは父上以下皆もお考えの通り、裏切る可能性を考えての事です。
有能な者を人質に取られぬようにとの配慮です。」
「「「なっ!!」」」
ハッキリと裏切るという曹彰に曹操及び、諸将も目を丸くする。
「曹彰裏切るなど軽々しく言うな、陳宮が理由も無く裏切るはずが無い。」
「理由?充分にあるでは無いですか!」
曹彰は周囲を見回す、曹操の耳にこそ噂が入っきていないものの、曹清と夏侯充の噂は許昌にいる将達には広まっていた、知らぬ、もしくは半信半疑だった者は地方を守る者達ぐらいだ。
事情を知っている将達の多くは目を逸らす。
「ハッキリといえ、何が理由だ!」
「ならば申し上げる!
父上の息女曹清が婚約者である陳宮を裏切り、不貞を働いた事です!
父上の耳には入っておられぬようですが・・・
荀彧!お前は知っているだろう!」
曹彰は顔色を悪くしている荀彧を名指しする。
「まだ、そんな事を言っているのか、曹清の一途な想いはお前も知っておるだろう。
荀彧どうなのだ?曹彰の言は間違っているとハッキリと否定してやれ。」
曹操はそんな事はあり得ないと考えており、曹彰が何処かで悪い噂を耳にしたかというぐらいの軽い気持ちであった。
「・・・間違っているとは言えませぬ。
曹操様のご命令かどうかはわかりませぬが、曹清様が夏侯充と仲良く過ごされているお姿は多くの者がお見かけしておます。」
「な、なんと・・・」
曹操は頭を抱える、まさか曹清がそのような真似を・・・
待て、夏侯充といえば夏侯惇の長男、現状を見かねて曹清自身が身を差し出したのか・・・
曹操は政治的見解から何故そうなったかを考える。
「おわかりですか、この噂は既に徐州まで届いております!
つまり父上は官渡の戦いの手柄でお認めになられた婚約を反故にしたのであります!
人のいい陳宮は兎も角、配下の者の怒りがどれほどかお解りになりますか!」
曹彰の覇気のある言葉は集まる諸将達の肝を冷やす。
「待て、俺はそのような縁組を薦めておらん、この件は曹清にも確認してからにいたそう。
今日はこれまでとする!」
曹操は一度諸将を解散させる、このような話なら昨日のうちに曹彰から詳しく聞き出しておけば良かった、曹操に後悔が残るのだった。
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