第120話 取調べ

翠嵐に捕まえられた紅花は曹清の前に連れて来られていた。

「曹清様、いったいこれはどういうことなのでしょう?」

紅花は事態がわからず混乱している。

過去に陳宮の面会をさせなかった事など既に罪悪感など無い。

むしろ夏侯充との縁談が進む一端を担えたと誇らしく思っていた。


「貴女に聞きたい事があります、陳宮様が私に面会を求めた時に取次をしましたか?」

「ええ、ちゃんと対応しました!」

紅花の表情からは取次をしたように見える。

曹清は首を傾げる、取次いでもらった記憶など無いのだ。


「それは陳宮様が面会を求めていると曹清様に伝えましたか?」

翠嵐は紅花の表情に騙される事は無い、質問を変えて問いただす。


「いいじゃない!夏侯充様と上手くいってるんでしょ!」

侍女同士である翠嵐に問いただされた事に紅花は堪えられ無かった、反射的に声を荒らげる。

「上手くいってる?それはどういう事でしょう?」

曹清の目は冷たい。

「え、だって相手は夏侯惇様のご子息ですし、ほら政治的にもいい縁組だってみんなも言ってますし!」

普段優しい曹清の冷たい目を初めて見た紅花は恐ろしく感じる。

必死で言い訳をする。


「私がそのような事を頼みましたか?」

「・・・ですが、曹清様も楽しそうになされていたではないですか!

たしかに私は陳宮に冷たくしたかも知れませんが縁談が進んだのは曹清様の望みだったからでは無いのですか!」

曹清は痛い所をつかれてしまう、たしかに夏侯充と話している時が楽しかったのは間違い無い。

だが決して陳宮を裏切るつもりも無ければ、縁談を進めようなどという気もなかった。


「お黙りなさい、侍女風情でありながら主への伝達を怠るとは許してはならない蛮行。

曹清様、この者も処遇はお任せいただけますか?」

「ええ、翠嵐に任せるわ・・・」

曹清は胸が痛くて頭が回らない。

私は自分の望みで陳宮様を裏切ったと言われてるの・・・


「ちょ、ちょっと!待って!曹清様!何か至らぬ所がございましたか!どうかお許しください!」

紅花もここにきて身の危険を感じ始める、曹清の目が自分を写していないようなそんな気がする。

声をかけても曹清に反応が無い・・・

「止めて助けて!翠嵐離して!」

紅花が暴れるものの取り押さえられ連れて行かれる。

残された曹清に紅花の声が届く事が無く、遠くを見つめていた。


「なんでこんな事に・・・」


この1件は曹清の心に大きな傷を負うことになるのであった・・・


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