第116話 鄴の戦い

陳宮が追撃をしない事でほぼ無傷の袁紹軍が鄴攻めを行っている夏侯惇の前に現れる。

「来たか!」

夏侯惇は鄴の包囲を止めて袁紹軍と対峙する。


夏侯惇軍10万に対して袁紹軍は15万だった。


陳宮を攻めるのを止めた袁紹は鄴に進軍しつつ、南皮、平原などの都市で徴兵していた兵士を呼び集めていた。

その為に一時は7万まで減っていた軍が再び15万の大軍勢に戻っていたのだ。

「あれ程の数で来るとは・・・陳宮は何をしている!」

郭嘉にとってこの数の差は計算外である。

鄴まで来る間に後ろから陳宮が攻撃を加える事で袁紹軍の疲弊と補充が出来ないようにしている筈だったのだ。


「来た以上、やるしかあるまい。

全軍に告ぐ!あれが曹操の息子、曹丕を辱めた輩である!

非道な行いをするものに天は味方せん!

全軍突撃!!」

夏侯惇は策も無く袁紹軍に突撃していく。


「お待ちを夏侯惇殿!」

郭嘉が静止するものの、勢いづいた夏侯惇は止まらない、袁紹軍の先陣を蹴散らし突撃していく、その勢いのままに袁紹本陣まで貫こうかという時だった。

夏侯惇の動きを予測したかのように矢が敵味方関係無く夏侯惇の周りに降り注ぐ。


その矢の数に夏侯惇も負傷する。

「誰だ!戦の作法も知らぬとは!

ここには味方もおるのだろうに矢を使うとは!」

夏侯惇は激高する、矢を受けたことではない、味方を巻き込んでまで勝とうとするその腐った心根に怒りを覚えたのだ。


「くく、父上、如何に言われようともその矢傷では戦えないでしょう。」

夏侯楙が袁紹軍に囲まれ、姿を見せる。

「夏侯楙!お前がやったのか!」

「ええ、天下に名高い夏侯惇をこの夏侯楙が討ち取るのです。

父として息子の手柄になることを誇りに思ってください。」

「・・・どうやら、育て方を、いや大地に産み落とした事が間違いであったか。

親としてケジメをつける!」

言うが早いか夏侯惇は周りを無視して一気に夏侯楙まで距離を詰める。

「なっ!ふ、ふせげ!防ぐのだ!」

夏侯楙は兵士の影に隠れて逃げ延びようとする。

しかし、怒りの夏侯惇からは逃げられない、頭から一刀両断されてしまうのであった。


だが、無理に突撃した代償を夏侯惇も払う事になる、夏侯楙が連れていた護衛は小心者の夏侯楙が厳選した腕利きである、夏侯楙は討たれはしたものの、夏侯惇も重傷を負ってしまう。

「父上!」

夏侯充は夏侯惇の周りを側近と共に固める。

「ぬかったわ、夏侯充、ここからはお前が指揮を取れ、このまま突・・・」

夏侯惇は指揮を渡し意識を失う。

「誰か手当を!いや、止血でいい!とにかくここから離脱するぞ!」

夏侯充は指揮を任されたのに周囲の部下達に声をかけるだけで転進を始めてしまう。

突如消えた先陣と総大将に後続達は混乱をきたす。

各諸将こそ、何とか離脱出来たものの、その数を大きく減らし、僅かな数で逃げ延びる事で精一杯だった・・・

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