第114話 戦況は停滞する
「このままじゃまずいな・・・」
籠城して1ヶ月となる、兵士達にも負傷者が増え、体力も消耗していく今の状況はよろしくない、元々呂布軍は外での戦いを得意とする、籠城戦では袁紹軍との違いを引き出す事も出来ない、ただ数の暴力に兵を減らすだけであった。
「夏侯惇達は攻めているのか?」
情報が入ってこない現状では信じるしかないのだが、袁紹軍に動きが無い様子を見る限り、上手くいっていないのかも知れない。
籠城が長引く中、嫌な考えばかりが頭をよぎるのであった。
「伝令を捕らえよ!」
夏侯充は青州方面に向かう伝令を捕縛していた。
鄴を落とす為には時間がいる、ましてや夏侯楙の居場所もわからぬ今、袁紹の本隊が戻って来るのは困る、手柄を立てる為にも今暫くは袁紹不在の状況を維持したかったのだ。
「夏侯充様、夏侯徳、夏侯尚様が見つかりました。」
「なんと!生きていたのか!」
思わぬ朗報に夏侯充は喜びを隠せない。
「はっ!かなりの手傷を負われておりますが、命に別状は無いものかと。」
夏侯徳、夏侯尚は先の戦で降ることを良しとせず、本隊降伏後、血路を開き逃走をはかるものの、道中手傷をおい、戻るに戻れず、僅かな手勢と共に山中に身を隠していたのだ。
「それは朗報だ、父上にお知らせせねば。」
夏侯充はこの朗報を夏侯惇に伝えにいく。
「なんと、降ることをせずに生き残っていたか!」
「はい、このことは夏侯家の名誉に繋がりましょう。」
「そんな事を考えるな!二人が生き延びてくれた事を喜べ!」
夏侯惇は名誉を先に述べた夏侯充を叱る。
「申し訳無い、ただ夏侯楙が貶めた夏侯家の名誉を回復せねばならぬと・・・」
夏侯充の言いたい事もわかる、夏侯楙のせいで曹操との関係が微妙な所がある。
家臣第一位としていた自分は曹操に意見をする身であり、家臣の不満などを曹操に伝え、調整していたのだが、現在出来ていない。
その為に少しずつだが曹操と家臣にズレが生じてきている。
早くなんとかしなければ取り返しのつかない事になる。
「夏侯充、気持ちはありがたいがまずは戦で手柄を立てるべきだ。
袁紹の動きはどうなっている?」
「まだ、こちらに向かってきているとの報告はありません。」
「未だ陳宮とやり合っているのか・・・」
陳宮が指揮する軍はそれ程多くない、あまり時間をかけると陳宮とはいえ耐えきれない可能性がある。
「やはり、鄴を置いて援護に向かうべきか。」
「父上!今は我が家の名誉を回復させる事が第一にございます、さもなくば曹家の屋台骨が揺らいでしまうのです。
多少の犠牲を出してでも鄴を落としましょう。」
夏侯充が言う犠牲の中には陳宮が含まれている。
「むう・・・しかしだな。」
「それに英傑と名高い陳宮なら防ぐぐらい簡単な事でしょう。」
「たしかに陳宮なら何とかしそうではあるが・・・」
「任せれば良いのです、それより鄴攻めを急ぎましょう。袁紹が知るまでが勝負です!」
夏侯惇は夏侯充の意見を採用して鄴攻めを開始するのであった・・・
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