第113話 苦戦と黎陽

臨淄が攻められている事は許昌にも伝えられる。

だが、現在曹操が動かせる兵は3万がやっとである、その3万も兗州に派遣し袁紹の進軍に備えるつもりだ。 到底陳宮の援軍に向かわす訳にはいかない。


「お父様!どうか陳宮様の救援を!」

「無理だ!兵が足りん、募兵をかけているが援軍に向かえるのは少し先の話だ。」

「ですがこうしている間も陳宮様のお命が・・・」

「こらえろ曹清、陳宮とてむざむざやられたりはせん。」

曹清は不満そうにするものの、戦場に行く手が無い。

それに加え曹丕を置いて行くことにも気が引ける現状に身動きが取れていなかった。


その頃、夏侯惇は黎陽を落とす事には成功したのだが、この後の戦略が纏まらない、陳宮の救援に動くべきとの声と、本隊が帰ってくる前に黎陽周辺を支配下に置き、袁紹軍が来ても防げるようにすべきとの声が有り、意見が二分していた。


現在、夏侯楙を討ち取れていない夏侯惇は夏侯楙が見つかるまで戦を終える気はない、周辺を支配下に置きつつ鄴を目指して進軍することを選ぶ。

「郭嘉、この兵力で鄴を落とせると思うか?」

「落とすのは厳しいが、夏侯惇お前の狙いは夏侯楙だろ、鄴に向かえば袁紹とて無視は出来んはずだ。向かってきた軍に夏侯楙がいるだろう。」

郭嘉の予想としては曹操軍にぶつけるなら裏切ったばかりの夏侯楙達であろう。

袁紹の本隊に連れて行かれているのかはわからないが戦況が嚴しくなれば前線に出てくるはずだ。


その時には・・・


郭嘉としても息子を始末する覚悟でこの戦にのぞんでいる。

普段冷静沈着な郭嘉の頭脳も怒りにより曇っていた。

息子を追うあまり袁紹軍を軽く見過ぎていたのだ。


官途の戦いで敗戦したとはいえ、袁紹の領地は広大であり、長く戦乱の続いている曹操の領地より余力が残されていることに気付いていない。

また、敗戦したとはいえ兵糧を失い撤退しただけだ、時間が経てば散り散りになった兵士の多くが帰ってくる。

祖国が攻められている状況に再び兵士となり、武器を取る。

彼らは数ヶ月前まで訓練を行われていた兵士なのだ。

僅かな時間で軍の再編が進んでいっている事に夏侯惇、郭嘉は気付いていなかった・・・

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