第110話 宴

宴が始まったのだが・・・


俺は参加していた者に目を丸くする。

大喬小喬の二人が余興として歌と舞を披露してくれている。

「見事なものだ!」

見聞きした者を魅了する二人の舞曲と舞は大軍を前にストレスを抱えていた者達にとっていい気分転換になったようだった。

「大喬、小喬二人に感謝する。」

俺は演奏の終わった二人にあらためて礼をする。


「陳宮様、よろしければ私達にお酌をさせていただけませぬか?」

「いや、そのような事をさせる為に声をかけたのではなくてだな。」

「いえ、私達がしたいのでございます。

どうかお願いします。」

「わかった、有り難く受け取ろう。」

俺はまず小喬から酌を受け、呑み干す。

「いい飲みっぷりですわ。どうぞ、私の酌もお受け下さい。」

「いただこう。」

俺は大喬からも酌を受け杯を重ねていく。

寝不足もあり、俺のまぶたは段々と重くなっていくのだった・・・


「よし寝たか、大喬小喬よくやってくれたな。」

張遼が宴の会場に現れる。

「張遼様、お約束通り私達二人を陳宮様のお側に置いてもらえるように手はずをお願いします。」

「お手つきになるかは鈍い陳宮次第になるが、それでもかまわないか?」

「ええ、寝所に出入り出来る身にして頂ければ。」

「わかった、戦場以外での陳宮の身の回りの世話を頼む。」

「かしこまりました。」

張遼と二人にあった密約について知らないまま、俺はぐっすりと眠りについているのであった。


その頃、許昌では俺と曹清が住むために造られていた屋敷が粗方出来てきていたのだが、肝心の俺がおらず、俺の部屋の内装を決められない、なんとかしてほしいと曹清の元まで陳情が届いていた。

「陳宮様のお部屋ですか。」

曹清は話を聞き少し悩む、陳宮が普段部屋としているのは執務室である、個人的な趣味の欠片も見つからない、身の回りの物をただ置くだけであったのだ。


曹清が悩んでいることに気付いた夏侯充が話を聞く。

「男性の部屋ですか?」

「ええ、私は男性の部屋をあまり見たことが無いものでどうすれば良いか考えているのです。」

「それならば、私が見立てて見ましょう、お気に召さないなら、その部分を変えて頂ければ、それらしい部屋になるかと思うのですが。」

「それはいい考えですね、少しお手数ですが見立てて頂いてもかまいませんか?」

「任せてください。」

曹清は夏侯充を屋敷に案内して部屋を見せる。


「素晴らしいお屋敷を建てておられるのですね。」

「ええ、自慢の屋敷になるように頑張っている次第です。」

曹清は陳宮との屋敷を褒められ嬉しくなる。

「えーと、この部屋なら・・・」

夏侯充は部屋を住みやすくするような家具の配置と手配をしていく。


「曹清様、如何でしょう?」

颯爽と決めていった夏侯充の姿は中々見事なものであった。

「素晴らしいです、私が口を挟む余地など無いぐらいです。」

「お役に立てて何よりです。」

「ありがとうございます。このお礼は後日させてもらいます。」

「いえいえ、お礼など必要ありませんよ。」

二人は仲良く会話をしながら屋敷を後にする。


だが、その姿を見た者からするとそれは二人の屋敷を作り上げているようにしか見えない行為であったのだった。

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