第105話 出産と使者

俺が徐州に着いて二月が立った、田畑の収穫も終え、一息ついた頃、朗報が届く、許昌にて貂蝉が出産をおえ、無事に男の子を産んだとの事だった。

「それはめでたい、して御名前は!」

「はっ、貂蝉様が呂宮様とお名付けになられました。」

「な、なんと呂宮様ですか!」

宮の字が使われている事に驚きを隠せない。


「陳宮様に感謝をお示しになられたそうにこざいます。」

「い、いやそのような事をなさらずとも良かったのに。」

「貂蝉様のお気持ちでございましょう。」

俺はむず痒い思いもあるが非常に光栄な事でもある。

今一度、主君呂布を思い天を仰ぐのであった。


俺は呂宮誕生を祝い、盛大な宴を開催した。

許昌を離れて以来、仲間達は何処か殺伐とした雰囲気があった。

この宴を機会に幾分和らげれば良いと思っていたのだが・・・


宴の最中に曹操からの使者が到着する。


「なんと・・・曹丕様がお苦しみになられているというのにこのような宴を開くとは。」

使者として来たのは曹丕の派閥でもあった曹休だった。

城に入るなり嫌そうな顔を隠す事が無い。

「曹休すまんな、身内で祝い事があってな、それで宴を行っているのだ。」

「個人でやるのは仕方ない事と思うが、これ程盛大にやるべき時期か!陳宮殿は些か配慮が足りぬと見える!」

「てめぇ!!」

「やめろ!」

曹休の言葉に成廉を始め、多くの者が怒りをあらわにしていた。


「曹休、お前はそんな事を言いに来たのか?要件を言え。」

俺自身も怒りを抑えながらも、曹休が来た要件を聞く。

「ふん!曹操様から命令である!

陳宮殿は軍を集め、青州より袁紹を牽制されたし!」

「それは攻めろということか?」

「仕掛けるのはかまわないが牽制だけに止めろとの事だ。」

「・・・わかった、軍を編成しよう。」

「陳宮!!」

大人しく受け入れる俺に怒っている周りが騒ぎ出す。

「落ち着け!曹休に怒ったとしても命令を聞かぬ訳にはいかない、曹休、見ての通り仲間が怒っているのでな早急に立ち去れ!」

「なんと無礼な、まあこんな田舎に泊まる気にもなれぬわ!」

曹休は足早に去っていく。


「陳宮!」

「落ち着け成廉、まずは呑め。」

俺は詰め寄ってくる成廉に酒を注ぐ。

「良いか、さっきも言ったが曹操と戦うつもりは無い、それにだ呂宮様、並び貂蝉様は許昌におられる、俺達が怒りに任せて動けばお二人がどうなると思う。」

俺の言葉に成廉、魏越は悔しそうにする。

だが、張遼が二人に耳打ちすると納得したのかグイッと酒を呑み干す。


「張遼、なんて言ったんだ?」

「単純な話をしてやっただけだ、それより今日は呂宮様の祝いだ、お前も呑め!」

俺は気にはなったものの、張遼の酒を断る理由も無い、一気に酒を呑み干し、宴を再開するのであった。

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