第101話 捕虜交換
郭図が使者としてやってくる。
「曹操殿、捕虜交換の話、受けてもらいますな。」
「わかった。受けよう。」
互いに争う事なくすんなりと話はまとまる、互いに後継者候補なのだ、断る理由も無かった。
両軍が黄河を挟み互いに見守る中、船上で捕虜交換が行われる。
無傷な袁尚に対して、身体を引きずるように現れた曹丕に使者をしていた荀彧は表情を引きつらせる。
「郭図殿、これはどういう事か、何故曹丕様にこのような仕打ちを!」
「申し訳無い、捕虜交換が決まるまで些か時間がありましたのでな、我らが止める間もなく牢番の者が・・・
いや違いましたな、そちらから降伏してきた者が忠誠を示す為にやったとか。」
郭図ほサラリと受け流す。
「誰がこのような酷い真似を!!」
「夏侯楙とかいう男ですな、あの男は本当に酷い、殺さぬようにと言う袁紹様の御命令を変に解釈したようですな。
おや、夏侯楙といえばそちらの重臣のお子でしたかな?」
「夏侯楙が・・・」
荀彧は夏侯楙を考え渋い表情を浮かべる。
夏侯惇の息子、夏侯楙がやった行為は少なからず曹操軍に亀裂を入れるだろう、特に曹丕派としては許せる行為では無いだろうし、曹丕自身恨みに思うだろう。
曹操とて、息子をこのような目に合されて夏侯惇をこれまでのように信頼するのか・・・
「おや。どうしましたか?
交換も終わりましたので互いに引き上げますか。」
郭図の言葉の通り、このままいても仕方ない、荀彧はしてやられた思いを抱え帰陣するのだった。
「曹丕!!」
荀彧が連れ帰った曹丕を見て悲痛な声を上げる。
服こそ綺麗な物を着せられているがどう見てもボロボロだった、そして額には目立つような焼きごての火傷がついている。
「ゆるさんぞ、袁紹!!」
曹操は怒りに震えている。
これ程の怒る曹操を見たのは徐州で家族を殺された時以来か・・・
今回も住民に手を出すようなら・・・
曹操の怒る気持ちはわかるが冷静な気持ちで覚悟を決める時が来ない事を祈る。
「荀彧!郭嘉!袁紹を滅ぼす策を立てよ!
袁紹の支配下を・・・」
そこまで言うと俺と曹操の目が合う。
そして、深く深呼吸をして、言葉を言い直す。
「袁紹一族を皆殺しにする!陳宮それならばかまわないな!!」
曹操はどうやら思い止まってくれたようだった。
「はい、袁紹一族を始末するなら協力致しましょう。」
「頼りにしているぞ!
皆引き上げだ!この屈辱を忘れるな!」
曹操は馬車に曹丕を乗せ、許昌へ撤退するのであった。
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