第100話 曹丕の身
足早に戻った俺は曹操に報告する。
「曹丕が捕虜に・・・」
曹操は青い表情を浮かべていた、世間では非情とも言われる曹操ではあるがその実、家族思いの男である、その心痛は計り知れない物がある。
「ただ、袁尚を捕まえて来た、これで交渉出来るだろう。」
「・・・すまん、陳宮。
お前を嵌めようとした曹丕の為に。」
曹操は申し訳無い気持ちになる、謹慎中の曹丕が出陣したことは陳宮の面子を潰しているのだ、その上その尻拭いまでさせるとは・・・
曹操は頭の痛い思いであった。
「気にするな、曹清様の弟でもあるからな。」
「すまん。」
曹操は謝るばかりであった。
俺は自宅に帰ると曹清にも事情を説明する。
「曹丕が・・・」
倒れそうになる曹清を俺は抱きしめる。
「大丈夫だ、相手の息子も捕まえて来ている、必ず捕虜交換の話になるはずだ。」
「でも・・・」
曹清としては兄の曹昂を失った時の事を思い出してしまう。
あの時には身体が引き裂かれるような思いをした・・・
ガタガタと身体が震えている。
俺は震える曹清をギュッと抱きしめるのだった。
一方捕虜になった曹丕の扱いは悪かった。
命こそ奪われないものの、先の戦で多数の者が亡くなった袁紹軍において曹操の息子など復讐の対象でしかなかったのだ。
「やめろ!もう止めてくれ!」
「うるせぇ!俺の兄貴はお前らに殺されたんだ!その苦しみを少しは味わえ!」
曹丕は死なない程度の拷問を受ける事になるのであった・・・
「おや、曹丕様、いいお姿ですね。」
夏侯楙は曹丕の姿を見に来ていた、曹操を裏切った以上袁紹軍で成り上がらなくてはいけない。
袁紹に気に入られるためにも・・・
「夏侯楙、助けてくれ!頼む!」
本来自分に頼み事をするような相手ではない曹丕がすがるように這い寄って来る姿に夏侯楙はなんとも言えない優越感を感じる。
「くく、これはいい。あの曹操の息子がこのような姿になるなど、たまらないなぁ。」
夏侯楙は這い寄る曹丕の顔を踏みつける。
「ぐぇ、夏侯楙、なにをする!」
「いいざまですな、私は袁紹様にお仕えすることにしたんです。
ですので!」
夏侯楙は曹丕の顔を蹴り飛ばす。
「私の忠誠の証の為に、役に立ってください。
おい取り押さえろ。」
兵士は夏侯楙の指示に曹丕を動かないように取り押さえる。
そして夏侯楙は拷問室にあった焼けた鉄を持ってくる。
「な、なにをする気だ・・・
や、やめろ!やめてくれ!!」
「あなたが最下級の身になった事を世間にも知ってもらいましょう。」
曹丕の額に焼きごてをあてる。
ジュウと肉が焼ける音が聞こえる。
「ぎゃあぁぁぁぁ・・・」
「いい悲鳴です、どうです、罪人と同じ印を入れられたお気持ちは。」
「痛い、痛いよぉぉぉ、誰が助けてよ、父上!!母上!!姉様!!」
曹丕は屈辱と痛みから地面を転がり泣き喚く、その姿を見て更に夏侯楙は興奮するのであった・・・
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