第97話 上陸

俺は二千の兵を率いて曹丕を追いかけ黄河を渡る。

「つくづくお人好しだ。」

「まったくだ。」

魏越、成廉は陳宮を見ながらタメ息をつく。


「そこが他者と違う所ではないか。」

張郃は嬉しそうに胸を張る。

「お前らこれから向かうのは死地だぞ、気を抜くなよ。」

張遼も気負いしていないみんなに一安心する。

兵は少ないながらも歴戦の勇であり、将も優秀である。

どんな死地でも切り抜ける自信がある。


上陸し、進む中、兵士から声が上がる。

「陳宮様、前方から逃げてきているものが・・・

曹操軍です、我軍の兵士が逃げてきております!」

「すぐに助けよ!皆、周囲への警戒を忘れるな!」

俺は逃げて来る兵を受け入れ、状況を聞き出す。


逃げてきた兵は曹洪の兵士であり、曹洪率いる軍勢は袁紹軍の奇襲に合い、奮戦するものの、曹洪の負傷を切っ掛けに瓦解し、曹洪の側近達は敵からの脱出を試み成功したものの、兵士は途中で逸れ、逃げている最中との事だった。


「曹丕様はどうなっている?」

「わかりません、袁紹軍に囲まれ、曹洪様に率いられ戦っておりましたゆえ、ただ敵軍の数が多く容易く脱出出来るとはとても・・・」

「ありがとう。誰かこの者に手当を。」

俺は傷ついた兵士の手当を命じ、少し思案する。


このまま、曹丕の援軍に向かった所で数が足りないのは明白、既に曹洪がいないなら共闘して当たる事も出来ない。


「進路を変えるぞ、まずは曹洪を救出する。」

俺は兵士から聞き出した情報から曹洪が逃げていそうな場所に向かい進路を変更する。


「陳宮、風に紛れて戦の音が聞こえる。」

暫く駆けると成廉が俺に伝えてくる。

「どっちの方向だ?」

「向こうだな。」

俺は成廉が示す方向に向かうとそこには袁尚に追われている一団の姿があった。


「これはいい!!

張遼、袁尚を生け捕りにして戦況をこちらに呼び込むぞ!」

「生け捕りだな、わかった!

全軍突撃だ!あの将の旗に目掛けて突っ切れ!」

張遼が先頭を駆り袁尚軍に突撃をかけていく。


曹洪を追撃することに夢中になり、軍が伸び切っていた袁尚にとって、側面からの俺の攻撃は予想外であり、一気に食い破られてしまう。

「脆いものだ、少しは警戒しておけよ。」

魏越は呆れている、いくら追撃戦をしているとはいえ、横への警戒がなさすぎる、いとも簡単に袁尚を捕縛することに成功していたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る