第95話 反撃
「曹操の倅が進軍してきただと・・・
舐められたものだな。」
袁紹は曹丕の進軍を黄河を渡る前から気付いていた。
官渡で敗戦したとはいえ、いまだ曹操に負けない戦力を保持している、今すぐ攻め込む事は難しいがそれでも防戦出来ないわけではなかった。
「沮授、いかにすれば良いと思う?」
「袁紹様、此処は逃がさぬよう奴らを引き込み始末してしまいましょう。
曹操も倅が殺されれば我らに勝ったなど天下に叫ぶ事も出来なくなるでしょう。」
「ふむ、して何処まで引き込む、あまり奥まで来て欲しくは無いが。」
「さすれば黎陽までに致しましょう、幸い奴らは黎陽を目指しておりますので、奴らが攻城戦に入った後周囲を囲み討ち滅ぼします。」
「わかった、沮授お主に全てを任せる、必要な将と兵と好きに使え。」
「ありがたきお言葉、必ずや曹操軍を討ち滅ぼしてみせましょう。」
沮授は軍を編成し、曹丕の進軍を待ち受ける。
曹丕はノコノコと沮授が張り巡らす罠の中に飛び込んで来るのであった。
「あれが黎陽か、まずは陣を張れ、明日より攻城戦を始める。」
曹丕は勝ち戦という事を疑いもしなかった、周りに煽てられ、かつての英雄が経験した伝説をこれから自分が体感していくのだと高揚していた。
その第一歩が黎陽攻めなのである。
逸る気持ちを抑え、そのまま攻める事を我慢した、慌てるのは英雄のする事ではない、まずは落ち着いて一歩ずつ・・・
曹丕は気付いていなかった、その場所が既に死地になっている事に・・・
陣を張り、明日の戦に備えて早めの就寝を取っていた。
「敵襲です!曹丕様、お目覚めを!!」
曹丕の寝所に慌てた伝令が駆け込んでくる。
「な、なんだ騒がしい、何時だと思っている!」
「それどころではありません!現在袁紹軍の奇襲にあっております!」
「なんだと!ならばさっさと迎え討て!」
「ダメです、既に兵が混乱しており・・・」
「くそっ!夏侯尚、夏侯徳は何をしている!」
「お二方と曹洪様は動ける軍を率い敵に当たられておりますが、敵軍の数が多く苦戦なされております。」
「くっ、なんでこんな事に・・・」
軍があわただしく動く中、曹丕は何も出来なかった。
一方正面の敵を防ぐ曹洪も限界を感じていた、左右を防ぐ夏侯尚、夏侯徳はよくやっているとはいえ、多勢に無勢、防ぎきれていない、徐々に追い詰められているのがわかる。
そして、正面の自分も押し返す事が出来ない、本陣の兵を纏める事が出来れば血路を開く事も可能なのだが、寄せ集めで集められた兵は既に逃散を始めている、曹洪は敗けを感じながらも曹丕か逃げる時間を稼ぐ為に戦い続けていた。
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