第90話 後始末

「曹清、すまなかった。」

曹操は深く頭を下げる。

「お父様、頭をお上げください、私が望むのは嫁ぐ事を邪魔しないこと、そして、如何なる時も陳宮様と一緒にいる権利をください。」

「わかった、俺の名の下に命令として出そう。

それとお前と陳宮の結婚式を盛大に行う。

それで許してくれんか?」

「お父様、盛大にですよ!いいですか?」

「勿論だ、天下に聞こえるような式にしてやろう。」

「待て!曹操!そんな派手な・・・」

「陳宮様、私と式をするのはお嫌ですか?」

曹清は潤んだ瞳で見上げてくる。

「いえ、そういった訳では無く、慎ましやかでもいいかなぁなんて・・・」

「大丈夫です、泥棒猫さんが入って来れないぐらいに盛大にしましょう。」

「いや、そんな心配は無いから・・・」


「こうしてはおれんな、直ぐ様準備しよう。」

「お父様、お願いします。」

曹操は足早に去っていく。


「待て曹操!!話がある!まてぇーーー!!」

俺の声は曹操に届かなかった。


一方、兵卒に格下げされた夏侯楙は夏侯惇から勘当され兵舎へと叩き込まれていた。

「くそっ、何で俺がこんな所に・・・」

夏侯惇の息子としてそれなりの暮らしをしていた夏侯楙にとって兵卒の暮らしなど考えたくも無かった。

だが、夏侯惇にその不満をぶつけた所、死ぬか行くか選べと逆鱗に触れてしまい、逃げるように来るしか無かったのだ。

「あれ、夏侯楙じゃないか?」

兵舎に入ると同じく格下げされた夏侯恩がいた。


夏侯恩とは歳の近い事もあり、面識があった、共に曹丕派閥として次世代を約束されていたのだ。

「そういえばお前も降格されてたな。」

「というと夏侯楙も何かやらかしたのか?」

「お前程ではないさ、それに俺は曹丕様の命令に従っただけだからな、そのうち元に戻されるさ。」

俺は降格させられたとはいえ楽観的であった。

確かにしたことは許される事では無くとも、曹丕の命令なのだ、曹丕が権力を得れば待遇など直ぐにでも回復する。

それに父夏侯惇は金に無頓着だ、勘当と言いながらも俺の個人資産を押収などはしなかった、その為、個人的にやっていた金貸しで稼いだ金が大量にある。

やる気になれば豪遊するぐらいは簡単なのだ。

まあ、今やれば流石に父が怒鳴り込んで来そうだからやらないが・・・


あとは曹丕が復権するのを待てばいいのだ。


「なぁ、俺も引き上げてくれよ、兵卒何かやってられるか。」

「はぁ?なんで俺がお前の面倒みなきゃいけないんだよ。」

「そんな事言うなよ、友達じゃないか?」

俺は少し考える、目立たないように暮らす予定だが、実際美味いものは食いたいし、欲しい物だってある、自身が買いに行くと目立つがコイツを使えば・・・

「夏侯恩、お前が俺の下僕になるなら俺が面倒みてやろう。」

「下僕だと!」

「嫌か?それならいいんだぜ、別に俺は困らないからな、大人しく兵卒やってな。」

「くっ・・・わかったやるよ、やればいいんだろ!」

「おや、態度が悪いなまずは口の聞き方からだな。」

「・・・お願いします、夏侯楙様、俺に働かせてください。」

「ククク、あーそこまで言うなら雇ってやる、だが俺の言う事は絶対だ、破れば拾い上げてやる話は無しだからな。」

夏侯楙は大笑いしながら夏侯恩の前からさっていく。

残された夏侯恩は悔しさで涙を流すのだった・・・

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