第87話 入り浸る曹彰

俺は執務室で仕事をしていたら曹彰が遊びに来ていた。

「僕も一緒に働く!」

どうやら強くなる秘訣が仕事にあると考えたようで俺の手伝いをする事で強くなれると思っているようだった。

俺が今やっているのは各地の収支を纒めるという地味な仕事なのだが、これを知っていると知らないでは軍略の立て方が変わる。


「いいですか、戦に勝つということはただ腕っぷしで勝つという事ではありません。」

「でも、強い者が強くない?」

「1対1ならそうでしょう、でも1対2なら、1対100なら、それにお腹が空いていたら戦えますか?

病気になっていたら?」

俺の説明に曹彰は目を閉じ、真剣に考えているのだろう、うんうんと唸りながら結論を出す。


「勝てない・・・かもしれない。」

武芸が好きな曹彰からすれば認めたくない結論だったのだろ、ボソリと呟く。


「そうです、万夫不当と言われる豪傑でもやり方次第で倒せるのです。なにせ腕は二本しか無いのですから。」

「じゃあ、どうすれば勝てる?」

「相手より強くなる事です、大軍を集め、鍛えあげ、そしてお腹を空かせない、そんな状況を作ればいいのですよ。」

「でも、大軍を用意出来ない時は?この前の戦いは袁紹の方が多かったって!」

「ええ、その時は知恵を振り絞るのです。

その知恵を支えるのが普段の情報です。」

「情報?」

「ええ、これにはどの地にどれだけの食料があるのかが書かれています、それがわかれば行軍する時に必要なものを何処で得られるかがわかるでしょう。

まあ勿論これだけでは勝てませんから、他にも様々な情報を集め、精査する必要があります。」

「わかるような、わからないような・・・」

「曹彰様はいずれ軍を率いるのでしょう、その時は私のような軍師を見つけるのです、そうすれば、無理に全てを必要はありませんよ、ただし、全てを知らなくてもいいですが、知ろうとはしてください。

信じる軍師でも間違いはあります。

軍を率いるなら全ての責任は率いる者にあるのですから。」

「はい!先生!!

でも、僕が率いる時は先生に来てほしいかも。」

曹彰の呼び方が先生に変わっていた。

まあ、こんな素直な生徒を持つのも悪くないかな、そんな事を考えているときに曹彰を呼びに人が来る。


「曹彰様、卞氏様がご家族で宴を催しておりますればどうかご参加を。」

「母上が?予定には無かったと思うけど・・

わかった、すぐに行く・・・」

曹彰は向かおうとしたあと、俺をジッと見つめてくる。

「先生も行こう!母上に紹介したい!」

その無邪気な笑顔に俺はほださる。

「わかりました、向かいましょうか。」

俺は仕事を止め、曹彰に連れられるまま、宴に向かうのであった。

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