第86話 反対派

曹丕を筆頭に曹清の婚姻反対派が形成されつつあった。

集まるのは曹丕と仲の良い、夏侯尚、夏侯楙、曹真など次世代を担うべき若者であった。

「夏侯尚、姉上の目を覚まさせるのはどうしたらいい?」

曹丕は曹操に叱られながらも、陳宮の魔の手から曹清を救うのは自分しかいないと息巻いていた。


「そうですな、曹清様はあまり男性と親しくしたことが無いと見受けられます、その為にあの年配者に付け込まれたのでしょう。」

「ならばどうすれば!」

「幸い夏侯楙が女性の扱いになれているうえ、見ての通り見た目も素晴らしい物があり、血筋も夏侯惇殿の次男と来れば、曹清様にお近づきになるのも致し方無いのでは?」

「夏侯楙か、確かに女性は見た目で男を選ぶという、ブサイクな陳宮と比べるまでも無いな!」

曹丕はその勢いのまま、曹操に言いに行くのだが・・・


「愚かな、見た目で人を選ぶな!

人を見るのはその才のみでよい!」

「ですが、父上!

女性は男を見た目で選ぶといいます、姉上もきっとお気に召すはず!」

「無いな。」

「父上!」

「曹丕、お前は見る目を養え、俺は陳宮との縁談を認めているし、曹清も陳宮以外の男を選ぶ事は無いだろう。」

曹丕の訴えはアッサリ却下されるのだが、曹丕は納得していなかった。

曹操の正室卞氏を焚き付け、宴を開催する。

多数の兄弟姉妹を集め、開かれた宴に曹丕は夏侯楙を連れて参加するのであった。

「姉上、こちらが私の友の夏侯楙というものです。今後お見知り置きを。」

「曹丕が世話になっています、確か夏侯惇様の次男とお聞きした覚えが・・・」

「そうです!我が父、夏侯惇は曹操様の一の腹心にございます。

どうでしょう、若者同士、曹操様の天下について話し合ってみませんか?」

「私に政治の話は荷が重いですね。」

「姉上そう言わずに、ち、陳宮の考えとかも聞きたいですし。」

曹丕は嫌そうに陳宮の名前を出す。


「私じゃ陳宮様のお考えなどわかりませんわ、私はただ付いて行くだけですので。」

「曹清様、失礼ですが最近の女性はそれだけではダメなのです。

世情を知り、夫を支える事がすっと一番で有り続ける秘訣なのです。」

夏侯楙は曹丕との話に割って入る。


「夏侯楙、貴方は今でも非礼な真似をしていると気付いていますか?」

「これはもうしわけない!」

「まあまあ、姉上、落ち着いて、夏侯楙も姉上を思い忠言してのですから、さあこれでも飲んで落ち着いてください。」

曹丕は飲み物を曹清に手渡す。


「曹丕、貴方も家臣を庇うだけでなく注意しなさい!」

「まあまあ。」

曹清は曹丕になだめられながら、持ってきてくれた飲み物をのむ・・・


「あれ・・・なにか、おかしい?」

曹清は内側から熱くなる気分が抑えられなくなる。

「姉上大丈夫ですか?夏侯楙、姉上を寝室にお連れする、手伝え。」

「かしこまりました、さあ、曹清様お手をお取りください、楽になりますよ。」

曹清はこの手をとっては駄目だと理性が訴えかけている、だが、身体から湧き上がる気分は手を取り本能に従えと訴えかけて止まらない。


曹清の額には嫌な汗が流れていた。

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