第80話 呂希の屋敷
勅使が来て、陳宮との離縁が成立した呂希は浮かれていた。
これで心置きなく夏侯恩と結ばれるのである。
呂希の母親である厳氏は娘の喜ぶ姿を見て同じく喜んでいた。
「お母様見た?あの陳宮の姿、勅使が来ているのに未練たらしく家に来ちゃって、恥ずかしくないのかしら。」
「呂希駄目ですよ、あんなのでも呂布様の軍師だったのですから。」
「何を言ってるの、あんなのが軍師をしてたからお父様は負けてしまったのよ!
そうじゃ無いと最強のお父様が負ける筈が無いですもの。」
「そうね、呂布様の武勇は素晴らしかったもの。」
厳氏は在りし日の呂布の姿を思い出す。
「そうよ、お父様は最強でしたもの、陳宮じゃ無ければ誰にも負けなかったわ!」
呂希の中で呂布は美化され続けていた。
「まあ、これで夏侯恩との間に障害はなくなったわ、心置きなく迎えれるわね。」
厳氏と話しているとふと人影が見えない事に気が付く。あまり多くは無いとはいえ、それなりの侍女、下女を雇っていたはずなのだが・・・
「誰かお茶を持ってきなさい!」
呂希が声を出すが誰も来ない。
「何よ、サボりなの?こんなの給料下げてやらないと。」
呂希は怒りながら屋敷をうろつくが誰もいない、やっと下女を一人見つけたのだか荷物を纏めて出ていこうとする姿だった。
「ちょっと。あんた!何処に行くつもり!」
「何処に行くも何も屋敷の主人がいなくなられた為に私達も出て行っているところにございます。」
「主人って、私がいるじゃない!」
「・・・此処は陳宮様のお屋敷でございますよ?
お話によるとこのお屋敷は縁起が悪いとの事で新しいご新居をご用意されているとの事でして、この屋敷は近々取り壊されるとか。」
「誰よそんな事を言ってる奴は!此処は私の家!わかる?わかったなら他の奴らも呼び戻して来なさい!」
「呼び戻してどうなさるのですか?」
「今まで通り私に尽くしなさい。」
「お給金は?失礼ですがこのお屋敷にはあまり財が無いと聞いております、陳宮様のお金も入って来ない以上、すぐに無くなると思うのですが?」
呂希は自身の身の回りの物や夏侯恩に贈り物をするために散財していた、一応陳宮の俸禄で賄える贅沢ではあったが、それでも財が貯まる程の余裕は無かった。
「何よそれ!お金なんて何とでもなるわよ!」
「それなら他の者をお雇いください、私はもう別の所に行くよう言われておりますので。」
下女はそそくさと呂希の前から立ち去っていく。
「なによもう!」
呂希が怒るものの、屋敷には厳氏と二人だけとなるのであった。
「貴様が呂希か!」
立ち去る下女を怒りながら地団駄を踏んでいたところに兵士がやって来る。
「そう私が呂希よ!何のようかしら!」
下女に感じた怒りを兵士達に向ける。
「この屋敷は取り壊しとなった、近日中に立ち退くように!」
「はあ?いきなり何を言ってるのよ!」
「この家は陳宮様に貸し出された、重臣用の邸宅である、縁の無い者が居座る事は許されん!」
「そんな馬鹿な話ある?私が住んでるの!」
「そのような事は関係ない!立ち退かぬなら力強くで追い出すのみだ!」
兵士が力強くで来られると呂希になすすべはない。
「あーわかったわよ!出てけばいいんでしょ!」
「今日は報せに来ただけだが、一週間後にもう一度来る、それまでに出ていくように!」
兵士は言うだけ言って帰っていく。
残された呂希は途方にくれるだけであった・・・
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