第77話 陳宮事実を知る

「陳宮、少し話がある。」

傷もだいぶ癒えてきたある日、張遼が深刻な表情で俺に話しかけてきた。

「張遼どうした?何かあったのか?」

「あったと言えばあった。」

張遼が話しにくそうにしているのが意外であった。

どれだけ厳しい状況でも冷静に判断出来る漢だ。


俺は張遼の話がそれだけ重大な事なのだろうと息をのむ。

「張遼、聞かせてくれ。」

俺は襟を正し、張遼の話を聞く。

「いいか、陳宮気をシッカリと持て。

・・・呂希様が浮気をなさっている。」

「なんと!お相手はどこの誰だ!」

「曹操の側近、夏侯恩という男だ。」

「それは誠なのか?」

「残念ながらな。」

「・・・うん?何が残念なのだ?めでたい話ではないか?」

「えっ?」

張遼の目が点になっている。

冷静な張遼にしては珍しい表情だ。


「呂希様が心を許せる御方を自ら選んだのだぞ、喜ばしい事ではないか。」

「だが、呂布様から家族を保護する代わりに呂希様をくだされたのでは無かったのか!」

「確かに殿はそのおつもりだったのだろうが、考えてもみろ、俺みたいに萎びた男に呂希様のように若く美しい方が嫁ぐ事の方が可哀想ではないか、好色な曹操から守る為に婚姻の形をとっていたが、呂希様には一度も手を出していない。

ご自身でお相手を見たけられたなら重畳だな。」


陳宮からの話を聞き、張遼は信じられない物を見る目になる。

呂希は若いとはいえ、既に美女と呼べる程の器量の持ち主である、それを婚姻していながら手を出していなかったなど、普通は信じれない話ではあるのだが・・・


「お前はどこまで枯れているんだ。」

張遼から呆れた声が出る。

「枯れているとは失礼な。ただ呂布様は呂希様が幸せになることを案じておられた、家臣としてはその願いを叶える事が最後の奉公であろう。」

陳宮の言葉に嘘は無い、張遼は真の忠臣を目にしたのだ。

同時にこれ程の忠臣を裏切った呂希が幸せになるとは思えなかった。


「しかし、離縁となると色々準備がいるな、なるべく早く許昌に戻らねばならぬ。

張遼、支度を頼めるか?」

「任せておけと言いたいが、少し待て、明日、お前の離縁を伝える勅使が来る手筈になっている。」

「勅使!!なんで!俺の婚姻だよな!なんで帝が気にしてるの!」

今度は俺が動揺する番であった。


「これも事情があったみたいなのだが・・・」

張遼から話を聞くと浮気を聞きつけた曹操が呂希と話した結果、勅使をもって離縁を言い渡すと言うなんとも言えない結果を生み出したそうだった。


「まあ、呂希様が喜ばれているのならそれでいいか・・・」

俺は勅使を出迎える準備を始めるのだった。

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