第74話 動けない

曹清の看護のお陰で俺はまだ生きていた。


「曹清様、ありがとうございます。

俺の為に。」

「いえ、それより傷が深いのですからまだ動かないように。」

「いえいえ、もう大丈夫です。」

「ダメです!寝台から出ないでください!」

曹清は俺が起き上がる事を許してくれない。


戦に勝ったとは思うが状況を確認しなければならないのに・・・


「陳宮、目を覚ましたのだな。」

「張遼、ちょうど良かった、状況を教えてくれ。」

「状況か?俺らのトップが曹清様に食事からシモの世話まで至れり尽くせりで飼われている。

十月十日が楽しみだ。」

「違うって!シモの世話まではさせてない!

ってそうじゃ無い、袁紹軍はどうなった?」


「何だそっちか?」

「それ以外の何がある!」

「まあ、袁紹軍は退却したさ、青州方面で高順と小競り合いをしていた軍も引き上げたようだ。」

「なるほど、なんとか戦を終えたか。」

「そうだな、今頃許昌では戦勝の宴が開催されている頃かな。」

「それでここは何処なんだ?」

「兗州の単父という村だ、お前が曹清様に甘える為に滞在している所だな。」

「だから、違うって!

しかし、色々勝手にやったから、一度許昌に行かねばならんな。

張遼、出立の準備をしてくれ。」

「無理だな。」

「何を言ってる?」

「曹清様が許してはくれないだろう、今医者を呼んでいるそうだ、それまでは曹清様に食べられて・・・もとい食べさせてもらえ。」

「おい、何か邪推をしているな、俺と曹清様はそういった関係じゃない。」

「それが一番の問題だ、まあそれが解決するまでは出立出来んな、おっと陳宮飼い主が来たぞ、俺は失礼する。」

「張遼!失礼な事を言うな!・・・っててて。」

声を荒らげたせいか傷口が痛む。


「陳宮様!いけません、どうかユックリなさってください。

張遼もあまり陳宮様をからかわないでください。」

「申し訳無い、曹清様、陳宮を宜しくお願いします。」

「はい、私に出来ることは全て行いますわ。」

曹清がニコヤカに笑うのを見て張遼は部屋から去って行った。


「張遼、陳宮が死にかけているとはどういう事だ?」

医者が到着するより早く高順がやって来た。

「高順、お前青州はどうした?」

「劉辟と徐盛に任せてある、あいつらなら簡単に落とされん、それより陳宮は?」

「今許昌から医者を呼んでいる所だが、曹清様の話だと少々傷が深いそうだ。」

張遼の表情から少し深刻な様子を感じ取る。

「くそっ!これからというのに!」

「大丈夫だ高順、曹清様が呼ばれている医者は神医と言われる程の名医だそうだ、彼の者が来れば状況は良くなる。」


「報告します!医者が到着しました!!」

ちょうど医者の到着を知らせる兵が駆けてくる。

「すぐに陳宮の所に連れて行け、俺達も行くぞ!」

華佗の到着、それは陳宮軍が待ちわびた瞬間だった。

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