第71話 拠点を確保

陳宮を連れて兗州の村、単父の商家に来ていた。

「この店を提出せよ!」

店に入るやいなや、成廉は店内に響き渡るような声で店を占拠しようとする。


「ちょ、ちょっと、兵士様、それはあんまりにございます。」

「逆らうなら命を・・・」

「成廉待ってください、私は曹操の長女曹清です、怪我人がいるのです、どうか邸宅をお貸しください。」


「曹操様の!いや。確かに以前お見かけした御方でございますな。

失礼をどうかお許しください。」

「あら、どこかでお会いしたことがありましたか?」

「いえ、許昌を散策なされているお姿をお見かけしただけにございます。

私は単父の商人、利平と申します。

以後お見知りおきを。」

「はい、この曹清、恩を忘れてたりいたしません、何か困った事があればいつでもおっしゃってください。」

「ありがとうございます。

さあ、みんな屋敷をすぐに渡すぞ、急げ!」

利平は屋敷にいた全員にすぐに身の回りの物をもたせ屋敷から出る。


「ご自由にお使いくださいませ。

何かあれば、村の宿におりますのでいつでも御用命くださいませ。」

「ありがとうございます。

お心遣いに感謝を。」

曹清は礼を言うとともに屋敷に運びこんだ陳宮の元に向かう。


「・・・なるほど、あの方が曹清様の大事な人なのか。」

曹清の慌て方から利平は曹清と陳宮の間柄を邪推する。

「まあとりあえず私達は宿に泊まりましょう、皆の分は私が持ちます。」

何はともあれ曹清と繋がりを持てた事に利平は上機嫌であった。


屋敷の主人の部屋に運ばれた陳宮は傷からくる熱にうなされていた。

「陳宮様・・・」

曹清は熱の出ている陳宮の頭に冷やした布を置く、傷の手当てをしたとはいえ状況は良くない。


「誰か、許昌に華佗という医者を呼んでください!

私の名前を使ってでも最速でこちらにお連れしてください。」

曹清は以前見た華佗の医術の凄さを知っていた、陳宮を助けるなら華佗のチカラがいる。


たとえ遠くとも許昌まで行って連れてくるべきだと考えたのだ。

すぐさま使者を出し、華佗が到着するまで曹清が付きっきりで看病するのだった。


「俺達に出来ることはこの村に敵を近づけぬ事、そして、許昌までの道を確保することである。」

張遼は兵士を集め、宣言する。


袁紹軍は敗退したが、その敗残兵が各地に散って賊となる事はよくある、だが陳宮の命を賊に邪魔をされる訳にはいかない、張遼は魏越に許昌までの道中の確保、成廉、張郃に周囲の平定、自身は村の守りをすることで万全な状態を構築する。

これにより単父が敗残兵に襲われる事が無くなるのだった。

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