第70話 戦勝

曹操の大勝利、それは天下に鳴り響く。

各地の諸侯としても曹操が勝つと予測していた者はおらず、その武威は瞬く間に知れ渡る事になる。


戦も終え、幾日か立つと戦の経緯が知れてくる。

「なんとまあ、青州を制圧して、袁譚を倒し、黎陽を落とした上に烏巣の兵糧庫を焼き払うか。

手柄を立て過ぎだな。」

各地からの報告が上がってくると、曹操といえど目を見張るような陳宮の戦果が上がってきていた。


「曹操様、曹操様の御命令無くこれ程の戦をするのは少々問題がありませんか?」

夏侯恩からすれば、陳宮が手柄を立てるのは非常に不味い、せめて呂希との関係が切れるまでは陳宮が曹操の目に届いて欲しく無かった。

「かまわん、その為に曹清がいる。

曹清の名で軍を動かした事にすれば、陳宮の勝手という訳でもあるまい。」

「しかし、曹清様は青州、もしくは徐州におられるのでは?烏巣攻撃までも曹清様の行動とは言えぬかと。」

「うるさい奴だ、若い者が手柄を妬むな!

妬むぐらいなら自分で手柄をたてろ!」

曹操は夏侯恩の額をピシャッと叩く。

「申し訳ありません!!」

夏侯恩は平謝りである。


「ったく!近頃の若いやつは・・・して陳宮は何処におる?」

報告を上げてきていた荀彧に曹操はたずねる。

「報告では兗州の村で怪我の療養をしているそうです。」

「なんだと!ケガをしているのか!」

「そのようですな、曹清様が華佗という医者を許昌より呼び寄せたようにございます。」

「華佗か、あの者は一癖あるだろう、大丈夫か?」

「曹清様は個人的な付き合いがあるようですから。」

「変わっているのは誰に似たものやら。」

曹操の呟きに荀彧は白い目で曹操を見ている。

その目はお前が言うなと語っていた。


「ま、まあよい、しかし、戦勝の宴には間に合わぬな、誰か軍の者は来れんのか?」

「陳宮の具合次第かと、どうやら全軍が村に留まっている様子をみるにあまり宜しく無いのではないかと。」

後ろで話を聞いていた夏侯恩を拳をグッと握り。喜びを噛みしめる。


「無理はさせれんな、ふむ・・・

ならば、陳宮の奥方、呂希を呼ぼうではないか。」

「呂希ですか?」

「うむ、陳宮の軍は呂布軍が主軸だからな、代理の者が来ないなら許昌にいる者に代理を努めて貰えばよい。」

「勝手に呼び、陳宮がヘソを曲げませぬか?」

「あいつが心配するのは俺が手を出すかどうかだ、だから今回は俺は手を出さん。」

「絶対ですぞ、呂希に手を出したと知れれば陳宮がどう動くかわかったものじゃありませぬからな。」

荀彧は曹操に強く釘を刺す。

「わかっておる、功労者の嫁に手を出せるか。」

曹操が笑う中、手を出した夏侯恩は気が気でないのであった。

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