第69話 突破したものの・・・

曹操が攻撃を開始したことにより、俺達への攻撃も緩くなる。

「陳宮、これなら抜けれるぞ!」

敵の圧が弱くなった事により、俺達のの進路を切り開く事が出来た。

「抜けた!全軍続け!」

先頭の張郃が抜け、そこから次々と囲みからの脱出に成功する。


「曹清様、切り抜けれましたな。」

馬を走らせる俺も少し一安心する。攻撃は散発的に受けてはいるものの、この程度の攻撃などすぐに魏越や成廉が潰していく。


やがて敵の囲みから完全に抜け出した所で一息入れることにする。


「曹清様、怪我はありませんか?」 

曹清を馬から降ろし、声をかける。

「私は大丈夫です、陳宮様こそお怪我は?」

「あはは・・・私も・・・?」

大丈夫と言おうと思ったのだが、やけに背中に痛みがある。


「陳宮様?」

「だいじょう・・・」

俺はチカラが入らず、膝をつく。

「陳宮様!」

曹清の悲鳴に似た声を聞きながら意識を失うのだった。


陳宮の背中には2本の矢が刺さっていた、1本は幸い鎧に刺さり軽いものであったが、もう1本は肩の付近の鎧の間に刺さっており、かなり深手となっていた。

「血を流し過ぎたか!」

曹清の悲鳴を聞いてやってきた張遼は陳宮に刺さる矢を見て青い顔をする。

既にかなりの血が流れているうえに矢傷は肉を腐らせ、死を招く。

医者に見せたくともすぐには見せれぬ状況だ、あとは陳宮の命にかけるだけだと感じるのだった。


「張遼!手当をします、チカラを貸してください!」

「曹清様、何を?」

「手当をするのです!このままだと陳宮様が死んでしまいます!!」

「手当てと言われましても此処には何も?」

「有るものでするしかないんです!

話している時間がありません!傷口を洗うので綺麗な水を持ってきてください!!」

綺麗な水と言われても、飲水を残している奴がどれ程いるか・・・

「みんな。水は残っているか!」

「俺は少しだけなら・・・」

「俺は無いな。」

「おらはあるぞ。」

張遼の呼びかけに兵士から水が集まってくる。


「近くに村がある、そこなら何かあるはずだ!」

敵を蹴散らしていた為に遅れて合流した魏越はそのまま、村に向けて駆け出す。


水を用意している中、曹清は自身の服から裁縫道具と傷口に巻くため、自身の服で汚れていない物を選び切っていく。


「曹清様、医術の心得が?」

「何かあった時にと思い、学んでいました。

ですが、やるのは初めてで。」

張遼がよく見ると、曹清の手は震えている。

そして、ブツブツ言いながら手順を確認しているようだった。


曹清の想いは張遼を含め、この軍にいる者ならみんなが知っている。

陳宮を失いたく無いのは曹清が一番であろう。


「張遼、矢を抜いてください。成廉は抜いた傷口を水で洗ってください。

私はそのあと、糸で縫います。」

「縫う?傷口をか?」

「はい、華佗という医者の方に教えて貰った方法なのですが。」

「華佗、何処かで聞いた事があるな。」

「名医と評判の方です、本当は華佗に見てもらいたいのですが・・・」

そんな時間が無いのは明白である。


「いいですか、矢を抜いたら血が出てきますからね、すぐにやらないと陳宮様のお命にかかわります。」

張遼と成廉はゴクリとツバを飲む。


「いいですか、張遼、抜いてください!」

張遼は一気に矢を引き抜く、抜いたと同時に成廉が水で傷口を洗いながす。

「成廉、それぐらいでいいです、あとはこの布の上から傷口を塞ぐように押してください。」

曹清は血を拭き取りながら傷口を縫いあげていく。


「血止めの薬草を貰ってきた!」

魏越が急いで村から薬草を貰って来ていた。

「助かります!」

曹清は縫った傷口の上から薬草を塗布する。

そして、布で押さえ、更に傷口を押すように縛る。

「張遼、何処か休める場所は?」

「近くの村に運ぶしか無いな、魏越休めそうな家はあったか?」

「少し大きい商店があった、そこを借り受けよう。」

「行くぞ、陳宮をなるべく静かに運べ!」

陳宮を槍と盾で作った簡易タンカに乗せてユックリと運ぶ。

「曹清様もお乗りください、陳宮を頼みます。」

「はい、皆さんすみません。」

兵士が担ぐタンカの上に陳宮と一緒に乗り、傷口を押さえながら、休める場所へと向かうのだった。

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