第68話 曹操

「矢が止んだな。」

袁紹軍が陳宮を追うのに集中した為、官渡にかける攻撃が止まっていた。

「全員、戦闘用意だ!!」

曹操は戦の流れが変わった事を感じていた。


「これより、袁紹軍に突撃を行う!」

「曹操、流石にそれは無謀だ!外には30万と言える敵がいるんだぞ!」

夏侯惇といえど曹操を止めようとするのだが、

「見よ!今まで降り続いていた矢が止まっている、これは袁紹軍に異変が起きた証だ!今この時をおいて勝機は無い!」

「伝令!烏巣方面にかなり大きな火の手が見えます!それに伴い、袁紹軍の大多数が何かを追いかけているような動きを見せております。」


「火の手に、軍の追撃・・・

曹操様、これは何者かが、いや今袁紹に攻撃を加えれるのは・・・

曹操様、陳宮が攻撃を加え、大打撃を与えたのでは?」

郭嘉は僅かな情報から推測を重ねていく。

「まあ、燃えているのが何でも良い、袁紹は我らが動かぬと高を括り、我らに背を向けているのだ、これ程の好機に動けん奴は我軍にいらん!」

曹操の言葉が全てであった。


この時を持って曹操軍は全軍を上げ袁紹に挑むのであった。


「突撃!今までの礼をしてやれ!」

これまで城内に籠もり、矢にさらされ続けていた鬱憤を晴らすように暴れまくる。


袁紹軍は烏巣を襲撃され、多数が追撃を行っていた、官渡を囲む兵達も後方を気にしていた為に曹操が出てくる事を考えていなかった。

ましてや袁紹達本陣上層部では裏切り者探しを行っている。軍を率いる者達は疑心暗鬼に囚われ身動き出来ない。


「防げ!防ぐのだ!」

前線にいる将は立て直そうとするものの、本隊からの援護も無く、これまで数の差で楽勝と考えていた兵士からすれば局地的に曹操軍が上回る状態に一気に崩れ始める。


「目の前の敵を蹂躙せよ!」

曹操は敗走を始める袁紹軍を徹底的に壊滅させるため、追撃を開始する。

我先にと逃げ出す袁紹軍に先日までの威容は無い。

生き残る為に北へ向かう者、諦め降伏する者、全てを捨てて逃げ去るものと・・・


既に大勢は決していた。


「曹操様、大勝利ですね!」

側近の夏侯恩は曹操に勝利を喜びとともに伝える。

「うむ、まさに歴史に残る戦になるだろう。

夏侯恩、お主も誇りに思うがいい。」

「はい!」

曹操は上機嫌に勝利を喜んでいた。

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