第67話 脱出

「曹清様大丈夫ですか!」

「大丈夫です、陳宮様も大丈夫ですか!」

「俺は大丈夫です!」

俺と曹清は横並びになりながら必死に馬を走らせていた。

烏巣を焼き払ったものの、 烏巣は敵に囲まれている、簡単に突破は出来ない。


張郃が先陣を切り、一丸となり抜け出そうとしているのだが・・・

「流石は袁紹、中々の陣だな。」

兵数差から始まり、陣の堅さもあり、容易く突破は出来ない。

張遼達も奮戦するものの、周囲から迫られる戦は不利以外の何物でもなかった。

「陳宮前に来い!中陣は不味いかも知れん。」

張遼から声が聞こえる。

「わかった、曹清様、前に参りましょう。」

「は、はい。」 

曹清にとって戦は初めてである、普通に馬に乗るのとは違い、空気が重く、体力を奪っていく。

すでに肩で息をしていた。


「曹清様大丈夫ですか?」

「大丈夫です・・・」

俺が曹清に気を取られている時に矢が降り注いできた。

「危ない!」

俺は曹清の盾になるべく矢が飛んでくる方向に立ちはだかるが幸いな事に曹清に当たる事は無かった、しかし、曹清が乗る馬の頭に矢が刺さっていた。


「曹清様、俺の手を掴んてください!早く!」

俺の言葉に曹清は迷うことなく俺の手を握る。

俺は曹清を自分の馬に引き寄せる、曹清の馬は曹清が離れた事を見届けたかのように馬は力尽き倒れていく。

「曹清様!俺にシッカリ掴まりください。」

引き寄せた態勢が悪かった、俺の前に引き寄せたのは良かったのだが、何故か対面になっている。

「陳宮様、この態勢は・・・」

曹清は少し恥ずかしそうではあるのだが馬を止める余裕も無い。

「今暫しご辛抱ください。」

令嬢としてはしたない姿になっている曹清に申し訳無い気持ちになる。

「大丈夫です。陳宮様にシッカリと掴まれば良いのですね。」

曹清はキュッと抱きついてくる。

「いや、まあ、そうなのですが・・・」

少し恥ずかしいがそんな事を言っている場合でもない。


「おい、陳宮がコトを始めたぞ。

これは生きて広めないとな!」

「死んでも死にきれねぇ!」

周りが煩く茶化しだす。

「てめぇら、噂にするなよ!」


「うるせぇ、死地でイチャコラする奴なんざ、辱めを受けやがれ!」

「行くぜ!陳宮の恥を晒すために俺は生き残るぞ!!」

何故か士気を上げ、再度力強い突撃を敢行する。


「いやな結束力を見せるな!」

俺の叫びは誰も聞いてくれなかった。

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