第66話 奇襲

「先陣は張郃に任せる、魏越、成廉は兵糧を焼け、張遼は本隊を任せる。」

戦場になれば俺の出番は無い、突撃に参加する必要は無いのだが、今回は周囲も敵だらけだ、下手に留まるよりは本隊中央にいるほうが安全である。

そして、烏巣を落としたら全軍で逃走である。

軍内にいないと置いていかれるだけだ。


「陳宮は大人しく見てろよ。馬に乗れるか?」

「確かにそれが心配だ。」

突撃前でも軽口を叩けるぐらいに緊張はしていない。軍の状態は良かった。

「張遼、あとは任せた。」

「任された、行くぞ!我等は最強である、その証明を天下にしようではないか!

全軍突撃!!」

俺達は小高い丘から一気に烏巣に向かい襲いかかる。


「敵軍が!敵の襲撃です!」

迎え討つは袁紹軍将軍、淳于瓊であった。

奇襲の報告を受けて見るが既に目の前まで軍が来ている。

「なんだと、いったい何処から来た軍だ!

偵察は何をしていた!他の陣からの報告は!」

「ありません!いきなり目の前に現れました!」

「そんな馬鹿な話があるか!曹操軍の動きは見張っていたはずだ!」

「出てきていません!それより敵が!!」

「くっ!すぐに兵士を動かせ!守れ!守るのだ!他の陣に救援を!」

淳于瓊の混乱は酷かった、大軍で追い詰めていたという油断があった。

烏巣の陣の周りには多数の陣が有り、曹操軍の動きを見張っていた、烏巣が襲われる前に敵を見つけれるはずだったのだ。

淳于瓊の中にあった防御戦略が全て覆る。


「淳于瓊!!」

先頭を切る張郃が淳于瓊の姿を見つける、元々袁紹軍で面識のあった二人であった、淳于瓊は一瞬援軍と勘違いする、

「張郃、救援有り難い!すぐに敵を・・・敵?張郃!お前はまさか!」

淳于瓊は咄嗟に槍を構えようとするが既に遅い、張郃の槍は淳于瓊の額を貫く所だったのだ。


「敵将淳于瓊討ち取ったり〜〜〜!!」

張郃の声が響く、守備兵にとって将軍が討ち取られるのは負けを意味する、我先にと逃げ出していく。


「成廉、魏越!」

「わかってるって!燃やせ燃やせ!」

濡れないように大事に保管してある兵糧に火を放っていく、その光景は官渡にて睨み合う両軍にも見える。


「なんじゃあれは?」

袁紹は事態を飲み込めない、烏巣が襲撃を受けるなど考えてもいなかった。

「急報です!烏巣が襲撃にあい、淳于瓊将軍は討ち死に、烏巣の兵糧庫が焼かれてございます!」

「・・・何を馬鹿な事を申しておる、曹操は動いておらぬではないか。」

「・・・別動隊がいたようにございます。」

「異なことを申すな、別動隊がおれば各所の陣が見つけれるよう配置しておったではないか。

郭図、万全と申しておったよな。」

袁紹は側近の郭図に目配せをする。


「はい、何処から来ても発見出来るように布陣致しました、そもそも烏巣に食糧庫がある事は最重要機密にございます、内通者でもおらぬ限り、烏巣のみを襲うなど・・・

はっ!袁紹様、もしかすれば、内通者がおるのでは無いかと。」

「何と内通者が!この俺を裏切るとは!!郭図、内通者を探し出し八つ裂きにせよ!」

「お任せあれ。」

袁紹は此処にきても犯人探しに精を出そうとしていた。

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