第64話 兵糧庫を狙って

俺達は少し寂れた港に着く。

「陳宮、ここは?」

「徐盛が待っているんだ、ここで船に乗って青州に帰るつもりだったんだが。」

「どうした?」

「袁紹の兵糧庫の在り処がわかった、俺達の手でこの大戦を終わらせてみないか?」


「まどろこしい事はいい、陳宮お前がやるかどうかだ。」

張遼の言葉にみんなが頷く。

「よし、ならばやるぞ!キツイ戦になるが頼んだぞ。」

「おう!」

俺達は袁紹軍の姿のまま、白馬の港に上陸する。

白馬には多く兵が置かれておらず、俺が用意した偽の命令書で難なく通過出来た。


呂布軍出身の者は今更驚く事は無いのだが、最近入ったばかりの張郃はあまりにスムーズに敵軍内を通過していくことに驚愕を覚えていた。

「張遼、陳宮様の偽書は凄い物があるな。」

「ああ、言われてみればな、呂布様は力強くの突破がお好きだったが、陳宮の偽書のお陰で兗州も取れたしな。」

ずっとやって来ている張遼には陳宮の偽書は珍しい物ではない、その為凄さに気付いていないが、今回の行軍で見つからず、奇襲をかけ黎陽を落とし、今食糧庫になっている烏巣に向かい軍を進めている。

しかも堂々と袁紹軍を突っ切っている。


「張郃これぐらいで驚くな、やらしい事をさせたら陳宮は一流だ。」

「そうだぞ、陳宮はやらしい事が得意だからな。」

成廉は笑いながら陳宮というか曹清の方を見る。


「あー、そうだな、やらしい事をさせたら天下一品だ。」

張遼も成廉の意図に気付き笑いながら答える。


「なぁ、曹清様は曹操様の娘なんだろ?なんで陳宮に懸想しているのか?」

張郃は前から気になっていた事を古参の二人に聞いてみる。

「さあ?知らねぇ、張遼は?」

「俺も知らん、陳宮は元々曹操軍にいたからな、その時に洗脳でもしたのだろう。」

「ひでぇ軍師だ、その時、曹清様は何歳だよ。」

「まあ、それは冗談だが、何かあったんだろ。

そうじゃ無いとあの懐き方は信じられん。」

張遼は理由まで深く追及するつもりはない、敵意が無いのならいいのだ。


「俺としては曹清様を応援してあげたいな。」

張郃は一途に陳宮に近寄る曹清に好感を持っていた。

鈍い陳宮に少し苛立つ事もあるのだが。


「ここにいるやつのほとんどがそうだよ、しかし、曹操の娘だ、陳宮の所に来るには文句を言うやつもいるだろう。

この戦の戦功で黙らせるぞ。」

張遼から戦意が見受けられる。

「つまり、陳宮にではなく、曹清様の恋路の為にいっちょ張り切りますか!」

成廉も気合いを入れ直す。

「俺は陳宮様と曹清様、お二人の為に槍を振るおう!」

張郃も二人に負けじと気合いを入れる。


「真面目だな、だが負ける気など無い。」

雨が降りしきる中、烏巣に向かい進んで行くのであった。

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