第62話 陳宮、罠にハマる
「陳宮様、何を探しているのですか?」
俺は田豊の部屋をひっくり返すように調べていた。
その事に曹清は不思議に思ったのだろう、質問してきた。
「名高い軍師、田豊なら今の戦況を調べているはず、ならば袁紹軍の配置図や作戦などもある筈なんだ。」
俺は置いてある書簡を次から次へと調べていく。
「お手伝いしますね。」
曹清は俺と違う場所の書簡を調べ始める。
だいぶ日が傾き出した、いくつかの献策はあったものの、軍事に関わる物の姿が無い、ここには無いのか・・・
俺に焦りが生まれる中、曹清の声が聞こえる。
「陳宮さま〜、官渡辺りの地名が書かれた書簡がありました。」
「曹清!本当か!」
「えっ!は、はい。こちらです。」
曹清は何処かモジモジしながら渡してくる。
中を見るとそれは布陣図であり、書籍から見ても田豊が書いた物ではない、きっと取り寄せた物なのだろう。
「ありがとうございます。これは大きいです。」
俺は興奮していた、布陣図以外にも作戦内容など現状を報せる書簡がいくつも見つかる。
「あ、あの陳宮様、お役にたちましたか?」
「ええ、それはもう!曹清様のおかげです。
ありがとうございます。」
お礼を言うのだが何故か曹清の頬が少し膨らみ不機嫌そうな表情を見せる。
「曹清様?」
「違います。ほらもう一度言ってください。」
「言う?何を?」
「そ、そうせいとお呼び下さったではないでしゅか。」
頬を真っ赤に染めて恥ずかしそうにしている。
「こ、これは失礼しました、年甲斐も無く礼を失してしまい・・・」
「いいんです、陳宮様。今後は曹清とお呼びください。」
「いえ、呼び捨てにするのは礼を失してしまいます。」
「私は今回のご褒美がほしいです。」
「そ、それなら都に帰った時に髪飾りでも。」
「むぅ・・・それも魅力的ですけど、曹清と呼んでくれることを希望します!」
確かにお礼はしたいのだが、呼び捨ては非常に不味い気がする。
「あっ、それならおくちにキスでもいいですよ。」
曹清は赤くなりながらもいい事を思いついたかのように言い始める。
「ご、ご容赦を・・・
そ、それなら人が周りにいない時ならば、お呼びしても。」
「キスでもいいのですけど。」
「それは大問題になると思いますれば。」
俺から冷や汗が流れる、キスなどをしたと知れた時には都で騒動になるだろう。
曹清が曹操軍の次世代の子達に人気があるのは知っている。
きっと、曹操の次世代を支える家に嫁ぐのだろうがその際にキズになってはいけないのだ。
「・・・今更ですけどね。
わかりました、陳宮様、二人きりの時は曹清とお呼びください♪」
「わかりました。」
「さあ、今は二人ですよ、呼んでみてくれますか?」
曹清は潤んだ瞳で見上げて要求してくる。
「わかりました、曹清。
これでいいですか?」
「はい、陳宮様♪
ちゅ♡」
返事と共に曹清が嬉しそうに抱きつき俺にキスをしてきた。
予想外の動きに俺は固まり、キスを受け入れてしまった・・・
「曹清!!キスの代わりと言ったでしょう!!」
「このキスは陳宮が城を落とした褒美です♪
一応姫のキスですから、褒美になるでしょ?」
曹清はイタズラが成功した曹操に似た表情をしていた。
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