第61話 落城後

混乱の極みの中、魏越達は行動を開始する。

「予想以上に混乱しているな。」

「魏越、俺は蔵を狙ってくる。」

魏方は魏越と別行動で蔵を狙いに行く。


「さて、焼けるとこから焼いていけ!」

魏越は外に積み上げられている兵糧を次々と焼いていく。

混乱する城内は更に混乱を増すのだ。


「敵の大軍がこの城に攻めて来たらしい!」

「敵は城内に乗り込んで来ているぞ、早く逃げないと!」

戦場から離れていた黎陽の兵や住民に攻められるという考えが無かった、混乱の最中、兵士や住人に憶測を含んだ噂が流れ、一目散に逃げ出して行くのだった。


「え、えーと・・・」

魏方が命を掛けて忍び込もうとした蔵は既に兵士が逃げ出し、保管されてあった食料も火事場泥棒的に住人が奪い合っている最中であった・・・

「一応、焼いておくか。」

魏方は奪い合う住人に紛れ、どさくさ紛れに火を放ったのだ。


「おい!火が出てるぞ!」

「早く持っていかなきゃ!」

住人達は逞しくまだ燃えていない食料をもちさって行く。


「これは・・・さ、さくせんは成功で良いよな。」

魏方はその結果に少し引きながらも合流地点に向かうのだった。


張遼が辿り着く事に合わせたように北門以外から兵士を先頭に住民達も逃げ出していく。

「脆いな・・・」

ロクな戦闘が起きないことに張遼は呆れていた。


「張遼、早かったな。」

返り血で血塗れになった張郃が張遼を出迎える。

「お見事だな、お前達で黎陽を落としたも同然だな。」

「太守の田豊を討ち取れたのは大きかったな。頭がいないと脆いものだったよ。」

張郃は壁に刺さっている田豊を指差しながら話す。

「太守がこの場にいたとは、運の無い奴だ。」

「それでどうする?予定と違い城が落ちたが?」

「陳宮が来てからだな、黎陽なら籠城戦も出来ると思うが・・・」


「無理だな。」

張遼達が話しているところに俺は混ざる。

「陳宮、黎陽は頑丈な城だぞ?」

「頑丈でも袁紹の勢力下過ぎる、それに食料を焼いてる所だしな。」

「籠城してたら曹操の援軍も来るんじゃないか?」

「来なかったら終わりだ、そんなバクチは打てん、それより城を手に入れたんだ少しやることがある、成廉は軍事物資を徹底的に焼け、張郃は宝物庫から金銭を街にぶちまけ、住民達にくれてやる。

張遼は建物を焼く準備を暫くは使えないようにする。

時間は今日の日がくれるまでだ、夜になり次第、城から出る。」

「了解!」


俺が指示を出すと即座に動き出す。

「陳宮、兵糧を焼いたけど、焼いてよかったのか?」

他の将が動いたあと、魏越がやって来る。

「ありがとう、思わず城は落ちたが、魏越の働きがあってこそだ、出発は日が暮れてからになる、それまでは休んでくれ。」


「あいよ。魏方休むぞ。」

「魏越、何か忘れてないか?」

「な、何の話だ。」

「剣だよ、さあ渡しな。」

「くっ!持ってけ!くそっこんなに簡単なら約束するんじゃなかった!」

「毎度あり〜」

俺は二人のやり取りに首を傾げたあと・・・


「魏越賭けに負けたのか?」

「ぐっ!うるせぇ!俺は今回の褒美に剣を要求するからな!」

「剣か?それならこの城の宝物庫にいいのがあるんじゃないか?

今張郃が金銭を街にぶちまけに行ってるから、欲しければ取ってくればいい。」

「本当か!やったぜ!ちょっと見てくる。」

「汚ねぇ!俺も行くぜ!」

魏越達は慌てるように宝物庫に駆けていく。

「ちゃんと休養は取っておけよ。」

「わかってるって!」

いまいち信用の無い返事ではあるが、俺もやるべき事の為に城内に向かうのだった。

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