第60話 作戦開始

黎陽の城門前に張郃と成廉が僅かな手勢と共に城内に軍を入れる為の手続きに来ていた。

「これが命令書だ。」

「確認いたします。」

「ああ、本隊が近くで待ってるから早めに頼む、ところで黎陽の太守はいまどなたが?」

「田豊様です。

命令書を確認しますので少々お待ちを。」


太守の名前を聞いて張郃は冷や汗が流れる。

袁紹軍に多くの軍師がいるが一番頭が切れるのは田豊だと考えていた。

今回の戦では田豊は別の作戦を提案した為に不興をかい軍から外されていたのだが、まさか黎陽の太守として来ているとは知らなかったのだ。


「成廉マズイぞ、田豊なら命令書に気付くやもしれん。」

「張郃それは本当か?まあ、ばれる前提の作戦だか・・・いつ仕掛ける?」

「今すぐでもいいぐらいだが・・・」

「あの受付をした兵士の姿が見えなくなったらすぐに行くぞ。」

「了解だ。」

張郃は当初の予定より早く仕掛ける事にする、しかし、これが功を奏すとはこの時、張郃は思いもしなかった。


田豊はこの日、偶々城内を見回りし、北門付近にいたのだ。

「なに?軍が黎陽に来ているだと?」

田豊にそのような話は来ていない、幸い報告を受けた北門に来ているのだ、様子を見ようと顔を出した、これが大きな間違いだったのだ。


顔を出した時に北門は・・・

地獄と化した。


張郃と成廉が戦闘を開始したのだ。

「「うおぉぉぉぉ!!」」

張郃と成廉が同時に周囲の兵を斬り伏せる。

「門を抑えろ!」 

「斬って斬って斬りまくれ!」

僅かな手勢と共に暴れだす。


「な、なにごとだ!気が狂われたか!張郃殿!」

応対していた者達は暴れ出した事に戸惑っていた。


「お前達、増援を呼べ!あれは敵だ!

取り囲め、敵の数は多くない、いや早く門を閉めるのだ!急げ!」

田豊は周囲の兵士を指揮し始める、急な展開に戸惑うのは田豊も同じではあったが、すぐに立て直し必要な事を指示するのだが・・・


「田豊!!」

兵の動きが組織化してくる、その中心に田豊の姿を発見した張郃が落ちている槍を拾い!田豊に投げる。


「落ち着け、敵の数は多く・・・なっ!」

兵に指揮を出すことに集中していた田豊は槍が飛んで来たことに気付いていなかった。

張郃の槍は田豊を貫き後ろの壁に貼り付ける。

「ゴホッ!ま、まもれ・・・ここは、だいじなばしょなのだ・・・」

田豊は槍に刺されながらも指示を出そうとする。

「田豊様!おい、槍を抜け!」

「わたしより、しろをまも・・・もんをとじ・・・」

田豊の手はチカラ無く下がる。


「田豊様!だめだ、亡くなられている。」

「敵が敵の大軍がこっちに来ているぞ!」

「に、逃げろ!殺されるぞ!」

田豊を失い混乱の極みに達したそれは城内に波及していくのだった・・・

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