第59話 作戦指示

兵を休ませる事に成功した俺達は黎陽に向かい進軍する。

「陳宮、黎陽も清河みたいに騙して城に入るのか?」

「いや、あそこは重要拠点でもある、命令書といえどバレるかも知れん。

そこでだ、魏越。」

「あいよ。」

「先行して街に入り込んでくれ、得意だろ?」

「まあな、それで何を狙う?」

「俺達が攻めた際に兵糧を焼き払ってくれ。」

「俺達の脱出は?」

「戦闘を開始するのは命令書を確認している時だ、門は開いている、北側の門に逃げて来い。」

「了解だ、先に行くぜ、お前ら来い。」

魏越は腹心を含めた気心の知れた者を百ほど連れて行く。


「さて、成廉、張郃お前達には死地が待ってるぞ。」

「何なりとお申し付け下さい。」

「陳宮!いやがらせか!」

すんなり受ける張郃と反発すら成廉の返事が返ってくる。

「嫌がらせでするか、二人には門で命令書を確認している時に城内に侵入してもらう。

多くの共を連れて行けんから死地になるが大丈夫か?」

「わかってるって、お前は作戦に私情を入れないもんな、任せとけ。」

「そう思うならカラカウのを止めろ。

戦闘が始まればすぐに救援に向かう、それまでは耐えてくれよ。」

「おう!」

「仕掛けるタイミングはお前達に任せる、戦闘が始まり次第張遼に突撃してもらう、魏越達が帰還したら退却するからな、暴れすぎるなよ。」

「はっ。私の武勇をお見せ致しましょう。」

張郃は槍を掲げ自身満々に告げる。


「いいか、黎陽が最初だ、ここからは時間の勝負になる、いいか成功しても油断するな。」

俺達は黎陽まではゆっくりと進軍していくのだった。


陳宮軍がユックリ進む中、先行した魏越は既に兵糧庫の在り処を見つけていた。

「かなりの数が運び込まれているな。」

兵糧は蔵に入りきらず、外にも置かれるぐらいに大量にあったのだった。

「へい、港に運ぶ前の貯蔵地になっているのではないかと。」

「俺もそう見るが・・・焼ききれるか?」

「かなり厳しいですな、蔵に入る者には覚悟がいるかと。」

「仕方ない、魏方悪いが死んでくれるか?」

魏越は従兄弟である、魏方に命令を出す。

しくじる訳にはいかない作戦である、信頼出来る腹心の中でも一番信じている者に命令を出したのだ。


「おいおい、死ぬのが前提か?ちゃんと任務をこなして帰ってくるさ。

だが任せろ、何があっても蔵の中に火をつけてやる。」

「頼もしいな、任せた。」

「任された、だがそうだな、成功して帰ったらお前の剣をくれないか?」

魏方は魏越が先日都で大金をはたいて剣を買った事を知っていた。

その剣はかなりの名刀で魏越が大事にしていることは魏越の部下なら皆が知っていたのだ。


「・・・この剣か?」

「おう、帰った時で構わないからな。」

「わかった!正し帰ってきた時だからな!」

「任せとけ、さてやる気が出てきたな!」

魏越と魏方、命をかけた戦いに挑むのであった。

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