第55話 戦況の変化

袁譚の敗北は袁紹にも伝えられる。

「あのバカ息子がぁ!ロクに戦も出来んのか!!」

袁紹の怒りは激しく周りが意見出来ないほどであった。

「まぁまぁ、父上落ち着いてください。」

袁紹の次男袁煕が袁紹をなだめる。


「袁煕、これで落ち着ける訳が無いであろう!」

「父上、お怒りはごもっともですが、今は戦の最中にございます。ここは悠然にすべきかと。」

袁紹は袁煕の言葉を聞いてハッとする、確かに取り乱しては王者としての威厳を損ねる。


「ゴホン!確かにそうだな、だが青州をそのままにもしておけん、袁煕5万の兵を任せる、青州との境を守れ。」

「父上、攻めないのですか?」

「守るだけでよい、所詮曹操を倒せば片がつくからな。国境を封鎖し、領民を慰撫せよ。」

「わかりました。」

袁紹は袁煕に守るように伝える、30万あった兵士が袁譚の敗北もあり、袁煕が出陣すると20万になる、10万の曹操を倒すのには袁煕に負けられると困るのである。

それならば、守りを固めてその間に2倍の兵力差で押し切る。

袁紹は徐々に苦しい戦いになっていくのだった・・・


「矢の数が減ったな。」

「そうだな、まあまだ多いことには違いないが。」

曹操と夏侯惇は建物の中から矢の数が少ない事に気付く。

「矢が切れてきたか?」

夏侯惇が口にするが、

「いや袁紹は準備をしっかりする男だ、矢がこれ程早く尽きるとは思えん、外で何かあったか?」

曹操は考え始める・・・


「夏侯惇、軍議を開くぞ!」

「どうした曹操?」

「流れが変わった、そろそろ戦になるかも知れん。」

「やっとか!すぐに軍議をするぞ!」

夏侯惇はイキイキと人を集めに行く。


「まだ急がなくてもいいのだが・・・

まあいい、このままこちらに流れが来ればいいのだが・・・

陳宮頼んだぞ。」

曹操は遠くで戦っているであろう陳宮に願いを託すのだった。


「くしゅん!」

黄河を渡る俺はクシャミをしていた。

「陳宮様、お風邪をめされたのでは!」

「いや、少し鼻がむず痒かっただけで・・・」

「いけませんわ、温かくしなければ。」

曹清は周りを見回し羽織れるもの探す。

すると近くにいた成廉と目が合う。


「成廉、何か陳宮様に羽織る物はありませんか?」

「そうですな・・・

それなら曹清様が温められては?」

成廉はいい事を思いついたかのように言う。

「わ、私がですか!」

「ええ、寒い地域では身体をくっつけ温め合うと聞きます、どうでしょう?」

少し笑いながら言う成廉からは面白がっている雰囲気がある。


「成廉、馬鹿な事を言わず羽織る物を・・・」

「それはいい考えです。

陳宮様、少し失礼します。」

曹清はピタリと引っ付いてくる。


「曹清様いけません!成廉早く羽織る物を!!」

「おっと、アッシはお邪魔ですな、ごゆっくり。」

成廉は俺の話を聞かず部屋から出ていく。

「あのバカタレがぁ!!」

「陳宮様、二人きりですね。」

「・・・」

「さあ、温め合いましょう♡」

曹清は潤んだ瞳で俺の胸元から見つめてきていた・・・


「おっと!わ、私もやることがありましたな!では失礼します。」

俺は足早に逃げ出す。

慌てて逃げるその姿は船に乗る者達に見られ、笑われるのだった。

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