第54話 進軍
袁譚を壊滅した後、一度青州まで引き上げていた。
「陳宮様、何故お戻りになられたのですか?」
曹清は首を傾げている、それもそうだろう、父親の曹操は今も大軍に囲まれ危機的状況である、見殺しにされるのではと不安もあるだろう。
「袁紹は大軍にございます。単純に仕掛けたのでは我々は全滅してしまいます。」
「ならば、どうなさるのですか?」
「大軍と戦いません。」
「えっ?ですが攻められているのです。
戦わなければ・・・」
「大軍だからこそ、スキがあるのです。」
「陳宮様、船の用意が出来ました。」
曹清と話している所に徐盛がやって来る。
俺は袁譚と戦っている間に徐盛に黄河を渡るための船を用意させていたのだ。
「船ですか?」
「ええ、今の冀州はもぬけの殻です。
こっそり渡って攻撃すれば袁紹も遠征どころでは無くなりますから。」
「そうなのですね。」
「それで曹清様、さすがに冀州への攻撃に馬車を連れて行く訳には行きませんので、ここから徐州に引き上げていただく事は・・・」
「大丈夫ですよ、陳宮様、ちゃんと馬に乗れますから。」
曹清はニッコリ笑っている。
どうやらついてくるつもりのようだが、俺は曹清の安全の為にも諦められない。
「侍女を連れていけませんから、曹清様はお留守番ということで。」
「大丈夫です。私は身の回りの事は侍女を使わなくても出来ますので。
いつも連れているのは令嬢らしく振る舞えとお父様がうるさいだけですので。」
曹清はニコニコ笑っているがそこには断固ついて行くとの固い決意が感じられる。
「陳宮、お前の負けだ、曹清様、陳宮から離れないようにしてください。」
高順が笑い堪えながらを曹清の後押しを始める。
「もちろんです、一時も離れたりしません♪」
「なるほど、一時もですか。」
「はい♪」
なぜか曹清は笑顔を浮かべ、周りは温かい目で曹清と陳宮を眺めていた。
「仕方ないか、曹清様、敵地に向かいますので絶対に離れないでください。」
「はい、わかりました♪」
「高順は青州を頼む、張遼、成廉、魏越、張郃は黄河を渡るぞ。」
俺は高順に2万の兵を預け、騎兵1万と共に黄河を渡る。
「曹清様、大丈夫ですか?」
俺は馬に乗る曹清の隣を離れない。
隣を並走し様子を見ていたのだが・・・
「陳宮、認めろ。お前より上手いぞ。」
張遼が笑いを堪えながら言う。
乗り始めた時に薄々気付いていたが、曹清は馬と息を合わせるように乗りこなしていた。
だ、だが軽い曹清が馬と息を合わせれば俺より良い動きが出来るのは当然の事・・・
「いや、単純にお前より上手いぞ。」
俺が色々考えているところに見破ったかのように張遼はもう一度言う。
「あーわかってるさ!認めたく無いだけだよ!」
「くすっ、陳宮様も子供みたいな所があるのですね。」
俺の反論を聞いた曹清はニコリと笑う、そう言われると俺は恥ずかしくなり顔が赤くなるのを感じるのだった。
「ふふ、陳宮様、お可愛いですね♪」
俺が恥ずかしがるのが楽しいのか、曹清は上機嫌で隣を走るのだった。
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