第53話 籠城中
俺が袁譚と戦っている頃、曹操は官渡にて籠城戦を繰り広げていた。
「袁紹の奴め、惜しげもなく矢を放つとはな。」
空は矢で埋め尽くされ、反撃する事もままならない。
「曹操様、何を呑気な事を、何かしなければ・・・」
「今は耐える時だ、いつまでもこんな攻撃は出来ん。」
「しかし・・・」
「くどいぞ、夏侯恩、この程度で喚いていたら戦など出来んぞ。」
曹操は矢で埋め尽くされる景色を肴に一杯呑んでいる。
「お前は肝が座りすぎた、少しは焦れ。」
そう言いつつも夏侯惇は曹操から酒を奪い呑む。
「お前も呑んでるじゃないか。」
「呑まないとやれるか、それでいつまでこのままだ?」
「矢が切れるまでだな、こんな攻撃をいつまでも出来る訳がない。
それまでは建物の中で様子を見ていればいい。」
今回の戦に備えて城を頑丈に作り変えている、単純な矢で落ちるような城では無かったのだ。
「しかし、よくもまあ袁紹も兵を集めたものだ。」
「それでこの兵力差でどう勝つ?」
「袁紹に勝つには俺達が追い詰められないといけないな。」
「既に追い詰められてるが?」
「まだだな、一丸となって戦わないと死ぬという所までいけば、数だけの袁紹を破るチカラが生まれるはずだ。」
「つまり、耐えろと。」
「そうだな、まあ外に陳宮がいるから案外楽をさせてもらえるかも知れんぞ。」
曹操は笑いながら酒を口にする。
「陳宮かいくら呂布の娘を許昌においているとはいえ裏切らぬ保証はあるまい。」
「あいつは律儀だからな、簡単には裏切らん。
呂希といったか、アレが逃げ出さぬように見張りはつけているがなぁ・・・」
「どうした?」
「散財が凄い、アレはロクな女じゃないぞ。」
「お前が言うとはな、見た目は綺麗じゃなかったか?」
「見た目だけだ、余程甘やかされて育ったのだろう、自重というものを知らんと見える、陳宮の給金の殆どを貪っておるようだ。」
「それはなぁ・・・」
夏侯惇も陳宮に同情するのだった。
「陳宮が愛想を尽かす前に新たな鎖で繋がねばならん。」
「それが曹清か?」
「そうだ、まあ本人の意思もあるが、曹清が繋ぎ止めてくれたら助かるな。」
「曹清の恋心が天下の行く末を左右するか。」
夏侯惇は笑いながら呑む。
「そこまでとは言わない・・・言えるのか?」
曹操も楽しそうに酒を口にする。
一方、呂希の名前が出ている事に気付き、夏侯恩は顔色を悪くしていることに曹操、夏侯惇の二人は気付いていなかった。
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