第52話 陳宮対袁譚

「劉備め、逃げおったか。」

劉備軍が崩れるのを袁譚は後ろから眺めていた。

「袁譚様、宜しかったのですか?」

「構わん。農民上がりの素性も知らぬ奴に手柄を立てさせる訳にはいかんからな、それより敵は疲弊している、全軍突撃せよ。」

袁譚は陳宮軍が劉備と戦い息が切れた所に全軍で突撃を開始する。


「劉辟、昌豨は下がれ、本隊を前に出すぞ。」

高順自身が前に出て先に戦っていた二人を休ませる。

高順が率いる1万にて袁譚軍4万を受け止めるのであった。


「さすがに高順も4万相手は辛いだろう、合図を送れ!」

俺は五千の兵を預け後方に迂回させていた成廉、魏越に合図の狼煙を上げる。


「おっ、やっと出番だな、魏越ミスるなよ!」

「当たり前だ!いくぞ!」

呂布騎兵隊の精鋭五千が袁譚の後方から本陣に向かい攻撃を開始する。


「なに!いったい何処から!ええい、防げ、敵は少ない、囲んで仕留めよ!」

袁譚は混乱しつつも兵に指示を送り成廉、魏越を討ち取ろうと動くが・・・


高順の後ろより態勢を整えた張遼が再突撃を開始する。

「我らの前に敵は無い、呂布騎兵の真髄を見せる時である!全員我に続け!」

張遼を先頭に一気に袁譚本陣を狙い突き進み出す。

「張遼、掩護致す。」

張飛を退けた張郃も張遼に遅れながらも態勢を整え攻撃に参加する。

二人の攻撃を止めるチカラが袁譚には無かった、武に長けた者がいないために二人に立ちはだかれる者がいない、徴兵されただけの兵士には猛将の前に立つ勇気も無い。

袁譚軍は面白いように割れていくのだった。

「袁譚様!ここは危のうございます!審配が犠牲になっているうちに撤退を。」

辛評はアッサリと審配を切り捨てる決断をする、この二人は元々仲が悪く、劣勢において助けに行こうなど考えもしていなかった。


「だが、此処で退却すれば父上に会わせる顔が無い。」

「冀州に向かうのです、そこで兵を集め今一度青州を取りに来ればいいだけにございます。」

「なるほど、そうだな、劣勢において無理をしてもどうにもならんな、辛評の言を採用する、全軍撤退だ!」

袁譚は被害が少ない内に撤退しようと考えていたのだが、既に指揮系統は乱れており、袁譚の指示は全軍に届かない、各自バラバラに逃げ惑う羽目になるのだった。


「弱いものだな。」

袁譚が逃げ去った戦場を見て高順が言葉を漏らす。

「袁譚などまだ若造だからな、大軍を任せる事が間違っている。

まあ、そのおかげで助かっているけどな。」

俺は高順と合流を果たす。


「陳宮、思ったより早く来たな。」

「結構厳しい戦いだからな、次の指示も出さないといけないからな。」

「捕虜はどうするつもりだ?」

「徐州に連れて行く、孫礼達に任せて開墾させる予定だ。」

「なるほど、荒れた地を耕すのか。」

「食料は大事になるからな。

高順、被害状況がわかれば報告頼む。」

「わかってる、軍が落ち着いたら纏めておく。」

俺達は次の戦いに備えていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る