第50話 開戦前

「5万は多いな。」

俺は袁譚軍と対峙し、布陣した小高い丘から袁譚軍を眺めていた。

「その割には落ち着いていらっしゃいますね。」

俺の隣には曹清が立っている。


「あとは皆に任せるだけですから、軍師は戦になるまでが仕事ですので。」

「そうなのですね、では私に戦の説明をしていただけないでしょうか?

恥ずかしながら戦場に来たのは初めてのことなので。」

「恥ずかしい事ではありませんよ、誰でも最初はあるのです。

不肖ながらこの陳宮がお相手致しましょう。」

「はい、優しくしてください。」

曹清は頬を赤らめ、少しうつむきながら俺に教えを請いでいた。


「陳宮、もういいか?」

高順が少し恥ずかしそうに聞いてくる。

「もういいとは?」

「あー、戦を始めていいかだ。」

「おう、後はお前に任せるからな。」

俺は戦闘における空気を読みきれない、戦闘自体は高順の方が得意なのであった。


「よし、陳宮軍よ、よく聞け!

これより我らは死地へと向かう!だが恐れること無かれ!我らの勝利に揺るぐものは無い!

見よ!先陣を駆ける騎馬の強さを!そして、最強の武人、呂布の系譜を継ぐ我らの武勇の前に敵はいない!

全軍突撃!!」

高順の言葉と共に張遼を先頭に騎馬隊が駆けていく。

それを追うように全軍が突撃を開始するのだった。


「見事な声だ。」

高順の声は強く響き渡るだけではない、その声の力強さに兵卒に至るまで奮い立つ物があるのだ。

「ええ、将兵皆さんの目の輝きが変わりましたね。」

「よく見ておられる、高順の異名は陥陣営と言いましてね、その名は攻撃を開始すれば打ち破れぬ物は無いということからきてまして、アイツに任せておけばこの戦勝ったも同然ですよ。」

「ふふ、高順さんを信用しておられるのですね。」

「ええ、戦場においては私などより高順の方が強いですからな、私は此処で全体を見るだけでしょう。」

「なら、私は横で学ばさせてもらいますね。」

曹清は隣にピッタリと並ぶ。


「少し近くないですか?」

「適正距離です♪」

俺と曹清が見つめる中、前線では戦闘が始まろうとしていた。

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