第48話 袁紹軍

「なんと、文醜までもが・・・」

袁紹の落胆は計り知れない物があった、これまで顔良、文醜両者の武勇は袁紹軍の武の象徴でもあった。

その二人がアッサリと倒されたのだ、士気の低下は免れ無い。


「父上、勝敗は兵家の常、それより我らは王者としての戦をすべきにございます。」

袁紹の三男袁尚は誇らしげに言う。

「袁尚、勝敗は兵家の常とは言え、武勇優れた両者が討たれたのだ、今一度戦略を考えねばならん。」

「ですから、王者の戦をするのでございます。」

「王者の戦とは?」

「個人の武勇に頼らず、父上の威信を頼りに戦をするのです。」

「俺の威信か。」

「はい、父上の威信は天下に鳴り響いております。

ならばこそ一歩ずつ全軍で前進すれば良いのです、さすれば小賢しい曹操も打つ手がございますまい。」

袁紹は袁尚が述べる王者の戦に心を馳せる。


確かにこれは天下を取る戦である。

個人の武名を轟かす戦ではない。

俺の威信を更に天下に響かすのだ。


「袁尚、よくぞ言った!お前の考えは素晴らしい!」

袁紹は上機嫌に三男袁尚を褒め称える。


「父上、王者の戦も宜しいですが、別動隊を編成し、許昌を襲撃するのは如何でしょうか?」

袁紹の長男袁譚は袁尚が褒められるのは面白くなかった。

袁紹の後継者を狙う袁譚としては揺るがぬ功績を立てたい所でもある。

許昌を襲撃し、帝を手中に納めれば第一の功は間違いない。

曹操とて帝を失えば正当性を失い瓦解することになるだろう。


「袁譚、それは王者の戦いではない!

この戦、袁尚の言うようにただ勝てばいいのではないのだ!

俺の子として今一度王道を学び直すが良い。」

袁紹の叱責は家臣達にも動揺が走る、長男である袁譚が後継者として有力視されていたが、三男の袁尚が継ぐ可能性も大いに上がったのだ。 


「失礼しました。」

袁譚は進言が裏目に出たことに肩を落とすのだった。


其処に青州が曹操軍に落とされている知らせが届く。

「袁譚!お前はどれだけ無能なのだ!簡単に青州を失うとは!」

袁譚は青州の統治を任されていたのだ、本来袁紹の元に来るときでも防衛体制を整えねばならないのだがいとも簡単に落とされた事に袁紹は激怒していた。

「申しわけありません!!」

「袁譚、お前が言うように別動隊を任せてやる、それで青州を取り返してこい!いいな!」

「はっ!必ずや青州を取り戻してみせます!」

「取り返すまで俺の元に顔を出すことを禁止する、サッサといけ!」

袁譚は逃げるように青州討伐に向かう事になるのだった。

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