第47話 文醜

「顔良が討たれただと!おのれ曹操!!」

袁紹のもとに顔良が討たれたとの報告が入る、それは自分達が曹操の陽動に釣られ、本隊を白馬対岸から動かしたことによる失策ということでもあった。


「文醜、曹操をのさばらせてはこの先の戦に影響があるだろう、このまま延津に渡り曹操が留守の軍を叩いてこい!」

「お任せを、袁紹軍随一の武勇を天下に知らしめてきましょう。」

「頼もしい言葉である!」

袁紹は失策を隠すように殊更、声高に話し文醜を見送った。


黄河を渡り対岸に着いた文醜は延津に既に曹操軍がいないことに気付く。

「既に逃げおったか!ええい、袁紹様は戦果をお望みだ、周囲を偵察し敵を探せ、残った軍はそれまで港を整備し、袁紹様をお迎え出来るように渡河に備えろ。」

文醜は報告を待ちつつ、延津にある押収した屋敷にて休養を取るのだった。


その夜・・・


「文醜様!敵の輜重隊を発見しました!」

文醜が酒を飲み寝ている所に連絡が入る。

「なんだ、やっと見つけたか、よし輜重隊と言えど戦果に違いない、動かせるか騎兵を用意しろ!」

「はっ!」

文醜は輜重隊と聞いて全軍を動かす必要は無いと考え、歩兵に拠点を任せ大多数の兵を残し、騎兵三千を率いて輜重隊を追う。


「文醜様、見えました!!」

文醜の前には逃げ惑う輜重隊の姿があった。

「あれか!よし殲滅せよ!輜重は戦果として持ち帰る、焼かないよう気をつけろ!」

文醜は敵兵の姿が少ない事もあり、簡単に蹴散らし帰還しようとするのだが・・・


持ち帰ろとうした輜重から火が吹き上がる。

「誰だ火をつけた者は!サッサと消せ!これは袁紹様にお見せする大事な戦果なのだぞ!」

文醜は慌てて火を消そうと指示を出す、その命令で多くの騎兵が下馬し火を消しにかかる。


「猪は簡単に罠に嵌まるな。」

文醜の後方から曹操の姿が見える。

「貴様は曹操!!」

「おう!この猪は喋れるみたいだな。」

「おのれ!言わせておけば!」

「やれ!」

曹操の合図の元、周囲の森から一斉に矢が放たれる。

矢は未だに馬に乗っている者を中心に倒していく。

「なっ!」

一斉射により多くの兵が倒れる。

「文醜、降るなら命は助けてやるぞ。」

「誰が曹操に降るか!俺の前に出てきた事を後悔しろ!全員俺に続け!」

文醜が駆けようとするが、混乱の中、騎乗出来ている者はほとんどいない。


「文醜、お前は袁紹の将として此処で討たれて名を残すといい。」

曹操が合図の手を振り下ろすと文醜目掛けて多くの矢が放たれる、文醜は躯を晒す事になるのであった・・・

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