第45話 懐柔

「民の為にですか・・・」

張郃も港から始まり街の様子も見ていた、ガリガリに痩せた者、多数の死体、荒れたなど田畑など、侵攻されたから出来たとは言えない傷跡がハッキリと見受けられた。


「そうだ、民無くして天下が取れるはずがない。

貴殿こそ、袁紹に組みして悪名を後世に残すつもりか?」

張郃にとって青天の霹靂でもあった、旧主韓馥の降伏からなし崩し的に袁紹に従ってきたが本当にそれが正しいのか・・・


「それにな張郃殿、この陳宮、生来の捻くれ者でしてな、天下が確実と思われる物をひっくり返したいのです。」

俺は笑顔で張郃の肩を軽く叩く。


あまりにも軽い話し方、しかし、その言葉に張郃に深く刺さる。

主が降伏したから、兵力が多いからなどというくだらぬ理由をつけ、いったい何をしているのだ。

天下の豪傑を自負する自分が如何に矮小であるかを感じる。


そして、目の間の殴れば死にそうなひ弱な文官が命を掛け天下の民の為に戦っているのに、自分は何をしているのだ。

張郃は自問していく・・・


そうだ、陳宮といえば徐州で曹操が虐殺をした時にその行為に歯向かい、呂布と共に曹操をあと少しという所まで追い詰めた漢ではないか!

今や曹操傘下のようだが、その実は民の為なのか・・・


張郃の中の義侠心が陳宮から尊敬を超えた物を感じ始める。


「陳宮殿、いえ、陳宮様、どうか私を陳宮様の配下に加えてもらえないてしょうか?」

「えっ?」

「必ずや陳宮様の祈願が成就するその時まで先陣を切らせてもらいたい。」

張郃から熱い目を向けられ俺は張遼に目をやる。


すると張遼はアッサリと縄を解き始める。

「張郃殿、先陣は俺の仕事だ、取らないで貰いたいな。」

「何を言う、張遼殿。先陣は新参者に任せて後ろで見ていてくだされ。」

「くくく、面白い。どっちが先陣を切れるか勝負になりそうだ。」

張遼と張郃は解かりあったように堅く握手を交わす。


「おい、張遼どうなってるの?」

「この張郃、これより陳宮様配下として天下の民の為、粉骨砕身お仕えいたします!」

気が付くと臣下の礼を取る張郃が目の前に出来ていた。


俺は張遼に目をやるとその目は大丈夫だと訴えていた。

「張郃殿、それ程重く考えなくてもいい、これからは同士として一緒に戦って行こうじゃないか。」

俺は臣下の礼を取る張郃の手を取り、立たせる。


「陳宮様、これは覚悟の話にございます。」

「だからこそだ、私は見ての通り、戦場ではお荷物だ、武官の張遼、高順達に支えられないと戦も出来ない、張郃殿これからの戦は厳しくなる、どうかこの陳宮と共に戦ってほしい。」

俺の言葉に張郃は男泣きをするのであった・・・

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