第44話 捕縛された張郃

「張遼どういう事だ?何故袁紹が俺に祝いの使者を送る?

そもそも呂姫様との婚姻は随分前になる・・・」

「違う違う、お前と曹清様の結婚祝いだ。」

張遼は笑いをこらえながら話している。


「詳しく聞かせてくれ・・・」

当事者の俺は少しゲンナリしながら聞くことになる。


話を聞くところによると、俺と曹清が徐州を出陣した時の事が話に尾ひれが付き、袁紹の元についたときには俺が袁紹の元での平和を望み、あえて派手な祝いをすることで袁紹に味方する意志を示していたのだという・・・


「いったい何処の馬鹿がそんな話に・・・」

話を聞いても俺は頭が痛かった。


だが、いつまでも捕縛している訳にもいかないだろう。

俺は男に向き直す。

「俺が陳宮だ・・・まあ、そのなんだ、張郃殿、不幸だったな。」

俺は可哀想すぎて見ていられない。


話を聞くところ、青州が落ちた事も知らずに黃河を渡り、堂々と通行しているところを張遼に捕まり、仲間と思い事情を話した相手が敵対している国だったという・・・


張郃は一度身を正し、俺に話しかけてくる。

「陳宮殿は袁紹様の味方につかれるべきです、曹操に味方しても滅びる未来しかありません!

今ならまだ間に合います!」

「曹操に味方すると滅びるか・・・俺は敵対して一度滅びたが。

まあ、それは置いておいても、果たして袁紹に曹操を破れるかな?」

「これはいなことを、曹操軍10万に対して袁紹軍は30万を超えています。

数の上からも袁紹様が勝つのは明白です。」

「まあ数だけ見ればな。」

「何をおっしゃる、数はチカラにございますぞ。」

「だが、袁紹にそれを使える器は無い。」

俺の答えに張郃は首を傾げる。


「袁紹様は広く識者を集め、民を慈しみ、今や天下随一の英傑となられたのです。

器が無いとは言えますまい。」

「袁紹は天下に足りぬ識者の言を取り、見た目ばかりの猛者を用い、民に苦境を強いる者である、そんな者に天下を取られては識者は地に隠れ、真の猛者は行き場を失い、民は命を失う事になるだろう。」

「陳宮殿!それは言が過ぎる!」

俺が袁紹を悪しき者と伝えると張郃は怒りをあらわにする。


「何を言う張郃殿、貴殿がその証ではないか。」

「私が?その証?」

「そうだ、その益荒男振りを見る限り、張郃殿は武勇に秀でた者である事は明白、その者に決戦が近い今、どこぞの痴れ者が挙げたかと知れない結婚の祝いの使者に立てるなど、張郃を、ひいては天下の豪傑を侮辱する行為ではないか!」

俺の荒げた声に張郃は少しビクッとする。


張郃自身、この命令に不満があった。

武官たるものどんな戦場に送られても文句を言うつもりは無い、だが天下に響く戦から外されるのは我慢出来ない屈辱でもあった。


「青州を見てほしい、袁紹に治められてからそれ程経っていないのに、かなり荒廃していた、これが天下を望む者のする事か?

少なくとも俺はこのような真似をする者に仕える気は無い。」

俺は張郃の目を見てハッキリと言う。


張郃の目には戸惑いも見えていた・・・

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