第37話 軍議

俺は動かせる軍を下邳に集結させていた。

「陳宮、袁紹は黎陽に集まっているようだが、何故近い小沛に集まらない?」

高順が疑問を投げかけてくる。

「30万の軍勢がいるところに俺達2万が仕掛けても戦にならない、それならば青州を先に落とす。」

「青州を落とすと簡単に言うがそれほど簡単とは思えぬが?」

「青州を守る袁譚は主力を率い黎陽に向かったとの情報があった、今は青州は僅かな警備だけになっている。」

袁紹の長男、袁譚は長子でありながら未だに家督の指名を受けていない。

その為、兄弟3人で家督を争っている状態だった、曹操を滅ぼす戦で戦功を立てねば他の兄弟に遅れを取ることになる。

目立った功を立てる為に自領から限界まで兵を連れて行っていた。


「作戦を伝える、とはいえ今回は単純だ、張遼、高順、二人に足の早い騎兵3千と替え馬3千を任せる、気付かれる前に一気に州都臨淄を落としてくれ。」

「おいおい、一気に狙うのか?」

「そうだ、本隊はゆっくり目立つように進む、臨淄までは距離があるからな、本隊の到着が遅いとなれば相手も袁譚にお伺いを立てるだろう、その間に落としてしまえ。」

「無茶を言う軍師だ。」 

高順はニヤリと笑う。

「ふっ、無理なら言わん、高順、張遼、呂布軍最強の騎兵を担ったお前達なら行けるだろ?」

「俺は簡単だが高順はなぁ、少し歳だしキツイんじゃないか?」

張遼は笑いながら高順をからかう。

「てめぇこそ、最近賊のお守りで鈍ったんじゃないか?無理なら早めに成廉に代わってもらえ。」

高順も負けずに張遼をからかい返す。


互いから無理な気負いは無く、任務の成功を感じるのだった。


「成廉、魏越に本隊を任せる、先程も言ったが目立てよ。」

「「えっ?」」

「張遼、高順がいないなどの噂が伝わるといけないからな、少々華美な出で立ちがいいな。」

「くくく、こりゃいい、成廉頑張れよ。」

「おい、高順!代われ、俺の方が足が早い!」

「嫌だな、陳宮の命令だ。素直に受け取れ。」

高順は成廉をからかっている。

「高順、何なら代わってもいいぞ。」

「ちんきゅ〜う!!」

高順の嫌そうな声が響く、その声が全員の笑いを誘うのだった。


一方、臧覇には密命とともに小沛に入ってもらっていた。

「陳宮も悪い手を使うものだな。」

元々、臨淄に近い泰山を本拠地としていた賊上がりの臧覇には臨淄への裏の道がある。

俺はそれを使いあらかじめ手勢を臨淄に潜入してもらっていた。


「あとは張遼達を待つだけだな。」

臧覇の手の者が臨淄に忍び込んでおり、合図次第で城門を開ける手筈となっていた ・・・

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