第38話 出陣

張遼、高順が早朝に出陣していった、その後俺達本隊が出陣するのだが・・・


「成廉、どういうことだ?」

俺は成廉を問い詰める。

俺の服装は正装にしても華美であり、見窄らしい自分に合うとは思えなかった。

「指揮官のお前の姿は大事だからな、皆に見てもらわねばならない。」

確かに成廉の言うことには一理ある、自身の恥ずかしさなど置いておくべきか・・・


そう考えてた時もあった。


「成廉、どういうことだ?」

「華美な軍が希望だろ?お前の希望通りじゃねえか。」

一台の華美な馬車が用意されている。

しかも、横の壁が取り払われ、オープンな状態だ。

「一つ聞く、アレに誰が乗る?」

「お前と曹清様だ。」

成廉の笑みがいやらしい。


「てめぇ、仕返しか!」

「お前も恥ずかしい思いをするがいい。」

成廉自身の鎧の装飾も派手である。

だが、負けず劣らず馬車も派手にされている。


「陳宮、さあ早く乗れ。

お前の命令だ。」

同じく派手な鎧を身に纏う魏越は力強くで俺を馬車に乗せる。

「や、やめよう、この作戦は失敗だ!」

「やる前から何を言う、それに曹清様は乗り気だったぞ。」

俺と成廉、魏越が話し合う中、曹清がやって来るのだが・・・


その姿は正装・・・というか、花嫁を想像するような、清楚であり、気品を感じるような姿であり、曹清自身の整った顔と相見、天女を思わせる出で立ちとも言えた。


「さあ、陳宮様参りましょう。」

「ま、まった!この状態で一緒に乗るのは不味い気がする。」

「そんな事はありません、陳宮様の作戦は見事でございます、さあ天下に噂が広がるように、いえ、歴史に名が残るような華美な出陣と致しましょう。」

「そこまでする必要はありません!もう少し弱めで充分・・・」

「やるなら、完璧に致しましょう。大丈夫です、必ず噂になりますから。」

曹清が嬉しそうにしている。


「いや、噂になるのは不味い気が・・・」

「大丈夫です、張遼、高順の存在を気にされないようにすれば良いのですね。」

「違う、不味いのはそれじゃなくて。」


「グダグダ言うのは後にしろ!さあ全軍出撃だ!色ボケ指揮官を天下に晒すぞ!」

「「「おおぉぉぉ!!」」」

成廉の言葉に華美な鎧を身に纏う軍勢が声援を上げる。

「てめぇら!全員グルか!」

俺の声に笑いが起きる。


「一番恥ずかしい思いをするのが指揮官の責任だな、行くぞ!馬車の前に花びらを巻け!」

魏越の声に馬車の前に花道が用意される、周囲には楽団が追従し、音楽を奏で、周囲に花も巻かれる。

そして、曹清が笑顔で住民達に手を振っている。


「綺麗な人だな・・・」

「これって、結婚式?」

「そうじゃないか?領主様はこれから領内を花嫁と回ると聞いたぞ。」

「領内をか?この戦乱の世に?」

「だから軍を引き連れているそうだ。」

「はぁ、凄いな、あんな綺麗な花嫁を娶るなら色ボケにもなるのか?」

「だが統治されてから俺達の暮らしは楽になってるからな、少々色ボケは許してやらないとな。」

「今更変な領主も困るしな。」

領民からも笑い声が聞こえる。


「曹清様、これは些か不味いと少々遅いですが私は馬で追従させてもらいます。」

俺は席を立とうとするが、曹清に腕を組まれて立つのを阻止される。

「ダメです♪陳宮様の作戦なのですから、最後までこなしましょう。」

曹清は俺の腕をキュッと自分に引き寄せる。


その姿は住民から仲睦まじい二人として見られていた。

色ボケ陳宮の名は本人の望みとは別に天下に轟くのだった・・・

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