第36話 天下騒乱

孫家の家督を孫策の弟、孫権が継ぎ、曹操と同盟が成立したことは袁紹の耳に入る。

「俺との同盟の話を無視して曹操と同盟するとは!!」

袁紹は報告書を破り捨てる。


「殿、落ち着かれよ。」

袁紹の軍師、郭図が怒る袁紹をなだめる。

「郭図よ、これが怒らぬわけあるまい!この袁紹が南の若造に軽んじられたのだぞ!」

「お考えを改めたら良いのです。

向こうが滅ぼして下さいと申すのなら、曹操の後に滅ぼせば良いのです。」

「それもそうなのだが・・・」

郭図の言葉に多少溜飲が下がるものの、面白くない気持ちに変わりはない。


「郭図よ、軍の準備は出来ておるか?」

「勿論にございます、殿のご命令を今か今かとお待ちしておる次第にございます。」

「ならば全軍に出撃を命じよ、この袁紹の天下取りを始めるのだ!」

「はっ!」

この日、袁紹軍は曹操に向けて出陣する。

このことは広く天下に知れ渡る。


「ついに動いたか、全軍官渡に集結せよ!」

曹操も袁紹を迎え撃つ為、拠点を許昌から官渡に移し、迎撃に備える。

袁紹軍30万と曹操軍10万の戦いが始まろうとしていた。


そして、その知らせは俺達のところにもやってくる。


「袁紹が動いたか!張遼、軍は動かせるか!」

「勿論だ、訓練は済んでいるいつでも行けるぞ。」

「ならば、俺達は下邳に向かう、寿春に兵2千を残し下邳に向かうぞ。

劉馥殿、寿春はお任せ致します。」

「お任せあれ、何があろうとも守ってお見せいたします。」

俺は劉馥と握手を交わす、南の孫権は動けぬはずだが何があるかわからぬのが戦乱の世である、守りの薄くなる寿春を引き受けてくれた事に感謝しかなかった。


「曹清様、これより我らは戦場に向かいます、ここも安全とは言いかねません、どうか許昌にお戻りください。」

「許昌も危険な事に違いはありません、どうか陳宮様のお側に置いてくださいませ。」

「私の側と申されましても、私は戦場に向かうのです。」

「私も付いて行きます、こう見えても馬にも乗れるのですよ。」

「曹清様いけません!戦場は危険な場所、女子供が行く場所ではありません!」

「陳宮様、この戦乱の世で安全な場所などありませぬ、ましてや曹操の娘の私はお父様が敗れればこの身がどうなるかわかりませぬ、それならば私自身戦場に身を置きたいと思います。」

曹清の瞳から断固たる決意を感じる、その瞳は自身の道を歩く曹操によく似ていた。


「わかりました、ですが私の側を離れぬようにしてください、戦場では何が起きるかわかりません。お一人で行動なさらぬこと、これは絶対ですよ。」

「はい、陳宮様のお側から離れません。」

「張遼、信用出来る護衛を用意出来るか?」

「お前ごと守る護衛を用意しておこう。」

「いや、俺は大丈夫。」

「非力なのはお前も同じだ、曹清様、陳宮を頼みます。」

「あら張遼様、これは頼もしいです。

これからもよしなに。」

曹清は張遼に笑顔で微笑む。


「陳宮は些か鈍いですからな、くれぐれも焦らぬように。」

「わかっております。」

張遼と曹清、何か解り合っているみたいだ。

どうやらあらかじめ話し合いは出来ていたのだろう。

二人の笑顔から俺は準備されていた事に気付いたのだった。

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