第32話 孫家からの使者
俺の元に孫策の使者として程普と周瑜という、孫策の股肱の臣がやってくる。
「陳宮殿はじめてお会いする、周瑜と申す。」
「高名聞き及んでおります、小覇王と呼ばれた孫策殿を陰日向に支えた名軍師周瑜殿ですな。」
「いやいや、私などまだまだ若輩の身全ては孫策の為せるワザです。」
周瑜から孫策に対して並々ならぬ忠誠心を感じる。
「本日のご要件を伺ってもよろしいかな?」
俺は周瑜にたずねる、周瑜の言葉に孫家の動きが見えるだろう。
「我が主君は曹操殿との同盟を望んでおられる。」
「これはまた直球ですな。」
「回りくどく言った所で陳宮殿なら察するでしょう、それならば、ハッキリ胸の内を明かしたほうが良いかと。」
「わかった、曹操には私からも書状を送っておこう。」
「良いのですか?」
「周瑜殿ならこちらの事情も知っておられるだろう、今孫家と事を荒立てたくないのはお互い様と言うことです。」
俺も孫家との同盟は賛成だった。
北に袁紹をかかえ、2面作戦などやりたくもない。
「陳宮殿が受け入れてくれたなら一安心ですな。」
「私がか?私などただの一軍の将でしかない。」
「ご謙遜ですな、私達が今曹操軍で怖いのは陳宮殿、あなたですよ。」
周瑜は柔らかく言うがその目は鋭かった。
「私が怖い?いや他国の方に、ましてや周瑜殿のような名軍師に言われるのは光栄な事だが、そこまで恐れるような才覚は持ち合わせていない。」
「ご謙遜を、旧呂布軍を率いるだけでなく、順当に戦力を増していっている、そのうち曹操の信任も厚いとなれば、我らが警戒するのもおわかりでしょう。」
「ふむ、端から見るとそう見えるのか、いや面白い見解だ、だが一つ間違いがある。」
「何でしょう?」
「呂布軍は呂布様が率いたからこそ最強だったのだ、私などが率いても最強にはまだ遠い。」
俺の言葉に周瑜は何も答えず、ただ爽やかに笑っていた。
そこに曹清がやってくる。
「陳宮様、孫家の方がお越しとお聞きしましたが?」
「これは曹清様、何か御用でもおありでしたか?」
俺は普段はしていないが対外的な来客ということもあり、曹清に臣下の礼を取る。
「陳宮様、いつもどおりでかまいません。
そちらが孫家の使者の方ですか?」
「はい、周瑜と申します。
失礼ですが、陳宮殿こちらの方は?」
「曹操様の御息女、曹清様です。
先程私が一軍を指揮しているように言いましたが、正確には曹清様の元で一軍を預かる身ですな。」
「陳宮様、私は軍の事については何も言いませんよ、ですが陳宮様がなさる事についての責任は全て私が引き受けますよ。」
曹清は優しく微笑む。
「なるほど、そういうことでしたか、陳宮殿もお人が悪い、呂布が鍛えし軍は新たな軍に生まれ変わろとしているということですな。」
「いや、周瑜殿それは勘違い・・・」
俺は周瑜が俺と曹清の関係を誤解していそうな事に気付き訂正しようとするが遮るように曹清が話し始める。
「周瑜殿は聡明な方なのですね、ささやかながら、酒宴を用意いたしております、さあこちらに。」
曹清は周瑜と程普を誘い、酒宴の準備が出来ている大広間へと案内する。
「・・・はっ!曹清様お待ちを!お待ちを!」
俺は訂正しようと奮闘するも周瑜の誤解を解くことは出来なかった。
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