第27話 領地拡大
俺は張遼を連れて寿春に軍を進める。
「陳宮、曹操の命令なく、軍を進めて良かったのか?」
「袁紹に勝つためには仕方ないだろ、今、寿春には守る群雄がいない、ならは抵抗も少ない筈だ。」
下邳、小沛では度重なる戦乱により疲弊しており、すぐに動ける状況ではなかった、そのために俺は比較的戦乱が少ない地、寿春を支配権に入れるように動いたのだ。
「寿春か、統治できるのか?」
張遼は心配そうに言う、それもそのはず、先日まで袁術が皇帝を自称し、漢に反乱を起こした、その袁術の都だった場所だ、その上、袁術の悪政と飢饉が重なり袁術は国を維持できなくなった所で病死していた。
今、権力が空白なのは土地としての旨味が少ないからなのだ。
「最悪統治出来なくとも、兵は雇用出来るだろう。」
俺は統治出来ないようなら食べさせる代わりに兵士として連れて行くつもりだった。
「考えはわかった、だが曹操の命令が無いと後で難癖をつける者が出ないか?」
張遼の質問に俺は渋い顔をする。
「どうした?」
「いや策はある。大丈夫だ。」
俺の視線が後方からついてきている馬車に向く。
「その反応、曹清様か?」
「先日、この計画を立てているのがバレてな、曹清様が問題ならご自身の名前を使えばいいと提案してくれたんだ。
まあ功績を立てれば曹操は何も言わない筈だ。」
俺は自分に言い聞かせるものの、曹清の名前を使わねばならぬ事態になった時を考え策を巡らす事を誓うのだった。
「お前は苦労しているな。」
張遼は少し呆れたように言う。
「張遼、それならば代わってくれるか?」
「無理だな、曹清様の興味はお前にだろ、それより寿春が近いぞ油断するなよ。」
張遼は逃げるように軍の指揮を取りに行く。
寿春には街を守る兵すら機能しておらず、そのまま入る事が出来た。
しかし、街の中は酷い有様であった。
暴行、略奪は当たり前の荒んだ街と化している。
「我は曹操軍、陳宮である!これよりこの城は我ら曹操軍の物となる。
これより罪を犯した者はこの陳宮の名に置いて裁く!」
俺は街の広場で宣言する。
それと同時に兵士が街の治安維持を開始する。
俺は荒れ果てた庁舎に入る。
「酷い物だな、これが一代の群雄の本拠地か。」
俺は滅亡すると言うことの恐ろしさを知るのだった。
「陳宮様、滅びるとはこういうことなのですね。」
「曹清様!なぜこちらに、城外の陣に滞在なされるようにしていたのに。」
「戦乱の世において綺麗な物だけではないと頭ではわかっているのですが・・・
私は知りたいのです、都にいて綺麗なものだけを見ていては戦乱の世は無くなりません。」
「曹清様、御心は素晴らしいと思われますが、女性や子供にこのような世界を見せぬ為に我ら大人が、頑張るのです。」
俺は曹清に優しく微笑む。
曹清の気持ちは立派なものだった、都にいて着飾るだけの若者に聞かせてやりたい話だ。
だが、子供であり、女性である曹清にはあまり見せたくない光景も荒れた街では行われている。
出来れば来てほしくなかったのだ。
「さあ、一度陣に戻りましょう。
明日以降街の復旧を開始しますので。」
「陳宮様もお戻りになられるのですか?」
「ええ、ご一緒致します。」
俺は曹清を連れて、陣に戻るのだった。
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