第28話 寿春

俺は寿春を片付ける傍ら、徐州の名士に貰った紹介状とともに人を訪ねていた。

「貴殿が徐盛殿か?」

「貴殿は陳宮殿ですな、お初にお目にかかる。」

俺は徐州出身で度胸があり、義に厚いと噂の徐盛を配下に欲しく訪ねて来ていたのだ。

「貴殿のチカラを貸して頂きたい。」

俺は深々と頭を下げる。

「頭をお上げください、私はただの浪人、一軍の大将が頭を下げるような者ではない。」

「私は自分より優れた者に頼む時に頭を下げるぐらいどうということはない、それより、この戦乱の世を鎮める為にも私にチカラを貸して頂きたい!」

俺は再び力強く、頭を下げる。


「戦乱の世を鎮めるか・・・

陳宮殿、曹操にそれが出来ると?

徐州で虐殺をするような奴に戦乱を鎮めることが出来のか?」

「あのような真似は二度とさせない!

もしその時が来たら、私は曹操を討つ!

その時にチカラが無いと戦う事も出来ない、頼む!私のチカラになってくれ!」

「曹操に仕えながら曹操を討つ為にチカラを貸せと?」

「曹操が戦乱を終わらせるなら、討つ事はない!だが虐殺をするなら話は違う。」

「面白い!だがその言葉に嘘があれば。」

徐盛は腰の剣に手をかける。


「私が戦う事も出来ぬ腰抜けなら斬ってくれても構わない。」

「ふっ、今は斬らん、お前の行く末で考えてみよう。」

「ならば!」

「同行させてもらう。」

俺は徐盛と硬く握手を交わすのだった。


徐盛に兵千を付け、寿春の周辺の治安維持を任せる。

徐盛は俺の期待を超える活躍で賊の討伐を次々とこなし、みるみると治安が良くなっていく。

一方街の方は呂布軍の時から幕閣である袁渙に任せていた、彼は人徳の士であること、そして、呂布軍に来る前は袁術の元におり、寿春にも詳しく彼を慕う者も街には多くいたのだ。

彼らを通す事で寿春の民も我らを受け入れていたのだった。


街が落ち着きを取り戻していく中、寿春の南、廬江から使者がやってくる。

「廬江からの使者か、会ってみよう。」

俺は使者を通す。


「曹操軍の指揮官に申し上げたい事が!」

どうやら俺の素性を調べる暇が無いほどの緊急事態のようだった。

「私は陳宮、一軍を任されているものだ、貴殿の名前と要件を聞かせてもらえないか?」

「こ、これは失礼を、私は廬江太守、劉勲の配下、橋公というものだ。

どうか我らを助けてもらいたい。」

「助ける?誰かに攻められているのか?」

「・・・もう城は落ちた、だが太守劉勲様を含めた妻子がこちらに逃げて来ているのだ、どうか保護をお願いしたい。」

「劉勲殿ですか、そういえば曹操の知り合いだったような。」

「そうなのです、劉勲様によると曹操様とは都におられた時からの旧知の間柄です。」

「張遼、軍は動かせるか。」

「ニ千なら動かせる。」

「よし、徐盛に城を任せて張遼は俺と救援に向ってくれ。」

「わかった、すぐに準備する。」

俺と張遼はすぐさま軍を起こして橋公の案内のもと救援に向かうのだった。

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