第19話 到着を待つ

「張遼、下邳はどうなっている。」

俺は寝台に横になりながら状況を聞いていた。

「今は関羽が守護しているようだな。」

「劉備は合流していないのか?」

「そのようだ、戦に敗れたあと、青州方面に逃走したと報告があった。」


俺は地図を広げ考える。

青州に向かったとなれば袁紹を頼ったと考えれる、青州から南下すれば下邳に戻れる上に広範囲において曹操軍を包囲することになる。


「まずいな、俺が倒れたばかりに戦況がよろしくない、すぐに出陣の用意を頼む。」

「陳宮、お前はまだ動けないだろ、せめて誰かに命じろ、俺でも高順でもすぐに向かうぞ。」

「いや、相手は関羽だ、ヘタに分けた軍だと逆に被害が大きくなる。

ここは全力で当りたい、小沛は魏越と孫観に任せて残りで向かうぞ。」

「お前は言い出すと聞かないからな、仕方ない、ただ無理はするな、移動用に馬車を用意してやるからなるべく横になることだ。」

「そんな時間は無い、馬に乗るぞ。」

「駄目だな、今の状況なら落馬しかねん、諦めて馬車に。」


「申し上げます!曹操様より陳宮様は出陣せず小沛にて待機しろとの曹操様の御命令が届きました、現在夏侯惇将軍がこちらに向っているとの事です。」

伝令が書状と共に入ってくる。


「見せてみろ。」

俺は書状を見ると曹操らしからぬ、俺の身体を気遣う文面から入り、護衛の蛮行を謝罪。

そして、夏侯惇に下邳攻めを任せたからゆっくり休んでいろとの命令を受ける。


「これは曹操からか?」

「はい、持ってきた早馬の報告によれば陳宮様の身体が第一、絶対に小沛から動かすなとキツく言われたとの事にございます。」

「・・・命令ならしかたない、張遼、夏侯惇が到着次第すぐにでも動けるように軍の編成を頼む。」

「わかった。」

俺はいつでも動けるよう準備をしつつ、夏侯惇の到着を待つ。


幾日が経ち、夏侯惇の到着が間近となった。

「さて、出迎えるか。」

俺は門の前まで夏侯惇を出迎える為に向かう。

「陳宮、無理をするな。」

「いや、俺達は信頼が低いのだ、目上の者に礼を失しては何を言われるかわからん、失礼の無いよう道を掃き出迎えるぞ。」

俺は礼服に着替え、夏侯惇の到着を門の外に立ち待つ。


「くっ・・・」

夏侯惇が着くまで、何時間かある、俺は何度かふらつきながらもなんとか立っていた。

「陳宮、大人しく座っていろ、姿が見えたら知らせてやる。」

横の高順が様子を気にして言ってくるが。


「それだと礼に失する、姿が見える前から立って出迎えるのが古来よりの礼だ。

俺は大丈夫だから、皆も列を崩さず待機してくれ。」

俺の言葉に今一度列を整え到着を待つ。


「見えたぞ、あれが夏侯惇の軍だ。」

遠くに軍が移動する時に起きる砂煙が見えてくる。

「来たか、全員今一度背筋を伸ばせ!」

俺は皆に伝わるように声を出し、夏侯惇の到着を今かと待つ、だが最初に到着したのは貴人が乗る馬車であった。

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